政治家と将棋

5月12日、国会内大臣閣議室において、河村建夫内閣官房長官と塩谷立文部科学大臣に五段免状が米長邦雄会長より授与されたとのこと。

ところで、 私が生まれて初めて読んだ将棋世界(1971年11月号)のグラビア頁に「福田外務大臣、田中通産大臣に五段を贈る」が載っている。

当時は佐藤栄作総理大臣時代。次期総理大臣は、福田赳夫か田中角栄かと言われていた。

事実、翌年の総裁選では二人が戦い、田中角栄総理大臣の誕生となった。

話を五段免状授与に戻すと、福田赳夫外務大臣には1971年9月23日に外務省大臣室で、大山康晴名人から免状が授与された。

田中角栄通産大臣には9月22日に目白の自宅で、同郷の原田泰夫八段から免状が手渡された。

両大臣とも、とても嬉しそうな表情。

当時の日本将棋連盟会長は、丸田祐三八段。

特に田中角栄元総理は、将棋が好きだった。

東公平著「升田幸三物語」より、1966年の田中角栄幹事長(当時)と升田幸三九段の対談から、田中角栄話録の引用。

「私は昭和22年の選挙で出て来たんですが、あのころは将棋盤と碁盤が国会にあったですよ。国会は時間がいつになるかわからんし、議員は足止めしとかなきゃならん所ですからね。芦田均さん(元首相)、長野県の植原悦二郎さん、この二人の将棋の早いこと、早いこと、とにかく本会議のベルが鳴ってから、もう一番やろうというんだ」

「将棋をやってる人はベルが鳴ってからでもすぐ片付けて本会議に間に合う。ところが碁の人は本会議にはいったことがない(笑い)。結局、間をもたせる碁が欠席の碁になったんで国会は碁盤を放逐した。それから3,4年たって将棋盤もなくしたが、私が幹事長になってからまた持ち込んだ。碁盤はよろしくないが、将棋盤はよろしい(笑い)。将棋はむずかしいが、日本人にはピッタリするものですね」

「しかし将棋で二回も負けると、本会議の採決どころじゃないわね(笑い)、自分が詰められちまうから。ですが、頭の切り換えにはいいですね。健康上にも非常に将棋はいい。夜など一人で盤に向かってやってますと、これは絶対に負けませんからね(笑い)。将棋の効能というのはたしかにあるね。私は外国人に将棋を教えたら、日本の深さがわかると思いますよ」

田中角栄元首相と原田泰夫九段は、後年まで交流があった。

余談だが、福田赳夫元首相と、三浦弘行八段のお祖父様は同郷で、大親友だったということだ。