三浦弘行八段の、ちょっといい話

千葉県野田市で行われた名人戦第3局、作家の団鬼六さんが現地へ観戦に行っていた。→朝日新聞記事

団さんは三浦弘行八段の応援も兼ねて、第3局に三浦八段が勝ったら、翌日から三浦八段とどこか一緒に旅に出て、景気付けにどんどん飲むつもりだった。 

団さんたちは、二日目の午後6時くらいから別の場所で酒を飲みながら、対局が終わるのを待った。

団さんは、もし旅をするなら野田からやや近い潮来へ行ってみようと考えはじめていたようだった。

午後11時過ぎ、打ち上げ開始。

さすがの団さんも、敗れた直後の三浦八段の様子を見て、とても「明日から一緒に旅に出て遊びに行こう」とは言い出せなかった。

そのことを察知したYさんは、団さんに、「第3局に負けてしまったけど、三浦さんに一緒に旅行しようと言っても大丈夫だと思いますよ」とアドバイスした。

打ち上げ終了後、もっと飲みたい人たち向けに用意されていた別室で、第二次打ち上げが行われた。

Yさんなどの誘いで三浦八段も第二次打ち上げに参加することになった。

もちろん団さんたちも第二次打ち上げで酒を飲んでいる。

三浦八段はウーロン茶を飲みながら、まわりの人の会話を楽しそうに聞いていた。

頃は良し、団さんが、

「三浦さん、僕は明日から潮来に行くけど、一緒に遊びに行かないか」。

一瞬、三浦八段の表情が嬉しそうに輝いた。

しかし、その直後、きりりと締まった表情に戻り、

「いえ、第3局も負けてしまったし、家へ戻って勉強をしなければ…」。

ここで、三浦八段と信頼関係の強いKさんが言った。

「三浦さん、もう0勝3敗じゃないですか。今までと同じことを繰り返したって、次に勝てるかどうかわからないじゃないですか」

この言葉で、三浦八段の表情に嬉しそうな輝きが戻った。

「団先生、私を潮来に連れていってください」

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番勝負は、カド番になった時に、どれほど開き直れるかどうかが重要だ。

第4局からの三浦弘行八段の巻き返しが楽しみだ。

潮来は水郷で有名な町で、ウナギや鮒、鯉などの川魚料理が名物。

団さんは、琵琶湖に面した彦根生まれ。

鮒寿司などの淡水魚料理が好きだと、以前のエッセイでも書いていた。

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この話は、団鬼六さんのお供で一緒に野田へ行っていた中野隆義さん(みろく庵での打ち上げから参加)から聞いた最新情報だ。