将棋世界2000年7月号、鈴木大介六段の「鈴木大介の振り飛車日記」より。
解説の仕事で女流王将戦第1局、石橋女流王将対清水女流王位・倉敷藤花の将棋を間近に見る事ができた。その時の模様を今回は書いていきたいと思う。
(中略)
初めて石橋さんの将棋を間近に見たのだが、とにかく才能豊かな将棋。というのが第一印象でそのダイナミックな駒捌きは一つの芸術であり魅力あると思った。また逆に第8図の▲4五桂等を見ると実戦馴れしておらず良い手は多いが勝ちパターンが少ないような気がした。
(※第1局は石橋女流王将の負け)
特に女流の場合、研究会等が少なく、たいがいの人が実戦不足になりがちなのでその辺りの勉強法の工夫が大事になっていくのではないかと思う。
しかし、この後で石橋女流王将には一つ他の女流とは違うものを見せつけられた。
その日の打ち上げも終わる頃、記録だった藤倉二段が盤と駒を持って来て将棋を教えて下さい(教えてあげる?)とやって来た。チェスクロックは家から持って来たらしい。そう言われては断れない。僕も奨励会の頃は(今は?)どこに行っても将棋の事を考え、将棋を指す事だけを考えていた偉い時期があった。さっそくホテルのロビー(他に指せる場所がなかった)で練習将棋を指していると、そこにさっきまでタイトル戦を戦っていた石橋さんの姿が…。
結局負け抜けで3人で10秒将棋を日付が変わるまで指し続けた。
僕らは当然将棋バカである。その中に女流の石橋さんが入っていた事がうれしかった。なかなか女性で男性の練習将棋に入るのは勇気のいる事だと思う。しかし彼女はそれ以上に将棋が指したい様子で、指している時も抜け番の時も真剣にそして楽しそうにしていた。
女流の中でもやはり清水二冠、中井女流名人等はかなり強いと思う。しかしこういった若手が出てくればこれからの女流棋界も面白くなると思う。
石橋さんの将棋に懸ける情熱、そして将棋が強くなるために必要な根本を見た気がした一日だった。
東京に戻る朝、新聞を見ながら昨日同じ九州、佐賀県で行われた名人戦第3局を眠い目をこすりながら並べていると、そこには当然のように藤倉二段とやはり石橋女流王将がいた。
僕は昨日の出来事からすでに石橋ファンになった。というよりも互いの将棋仲間になったと思う。
(以下略)
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今日は、マイナビ女子オープン挑戦者決定戦、石橋幸緒女流四段-上田初美女流二段戦。→中継