1993年の駒音コンサート

将棋世界1994年2月号、神吉宏充五段(当時)の「対局室25時」より。

 棋士の多くは元来酒が好きか、先輩に酒を鍛えられたか、いずれにしても酒に縁がある。

 それに伴って覚えるのがカラオケ。歌である。勝負に勝って歌い、負けて歌い。駒音コンサートも10年目、第7回を数え、そんなカラオケ好きの”棋界の歌手”に登板の喜びが与えられる。

 なんといっても日本の誇る超一流のオーケストラ陣がバックである。嬉しいやら、申し訳ないやら・・・。

 私は昨年初出場させていただいて今年が2回目。せっかくのチャンスだし、オーケストラの皆さんと交流をはかる意味でも、ここはひとつオペラにでも挑戦したろかいなと、楽団に打診。

「それでしたら、オペラ歌手の宮本聡之さんとピアニストの神野明さんが個人レッスンさせてもらいますので」と、恐縮もんのご返事をもらって、ご教授頂いた。はっきり言ってオペラは凄い。声を力の限り張り上げ、腹から謳う・・・。

 なんかこう、胸にグッとくるものを感じてしまったが、オペラとは私のように大感動するか、絶対に受けつけられないか、どちらかなんだそうである。

 歌うはヴェルディの歌劇「椿姫」より「乾杯の歌」。若き詩人が椿姫に恋し、「愛こそ全て」と歌う。知っておられる方も多いはず。手渡された楽譜はイタリア語。さっぱりわからん私だが、カナをうってもらって激闘1時間。

 そして遂にコンサート当日。CDで聴いてはいたが実質オペラ歴史1時間の挑戦である。歌詞は間違うは、声は出ないわ・・・でもおもろかった。来年もまたやろ。今度は練習バッチリでいきまっせ!

 さて今回の駒音コンサート、棋士のど自慢に出場したのはこのメンバー。

中川大輔五段 「どうする

伊藤能四段 「五番街のマリー

高橋道雄九段と娘の彩奈ちゃん 「おさんぽ」

関根紀代子女流四段 「越後獅子の唄

加瀬純一五段 「冗談じゃねえ

田中寅彦八段 「さらば青春

植山悦行五段・中井広恵女流名人 「愛の奇蹟

塚田泰明八段 「恋人」

小林健二八段 「心こおらせて

関根茂九段 「海の祈り

長沢千和子女流三段 「愛の賛歌

谷川浩司王将 「三都物語

 初出場は伊藤、中川、加瀬、植山、関根夫妻と、大量6人。それにB1の順位戦が重なったせいで、内藤九段、青野九段ら常連の登場がなく残念だったが、逆に新人が盛り上げて新味溢れるコンサートになった。

 注目は新人の歌唱力だが、中川の田原俊彦ばりのフリと加瀬の飛びきりの演歌。これは大収穫。面白かったのが吉川アナウンサーが植山・中井の「愛の奇蹟」を「愛の化石」と言い間違えて紹介したこと。い、いつ終わったんや、この二人?

 トリは谷川王将だが、ブツブツの嵐。

「なんで私が長沢さんのあとなんですか・・・あんな拍手のあとで・・・ブツブツ」

と文句たらたら。まあ、長沢さん一人だけレベルがちゃうんやから、不運やと思ってあきらめて下さい。

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妄想だが、私がイイノホールで歌うことがあったとしたら、絶対にグループサウンズの曲をやりたいと思う。

当時の衣装や振り付けで。

私がカラオケでグループサウンズの曲を歌うことは滅多にないが、ステージの上なら華やかにいきたい。

両手でマイクを握って、歌いながらひざまづく、ザ・テンプターズの「神様お願い! 」が有力候補。

気分はショーケンだ。