関西将棋会館の近所の店で交わされた面白い話。
近代将棋2004年10月号、故・池崎和記さんの「関西つれづれ日記」より。
昼休みになり、鈴木(大介)八段から「池崎さん、何か(出前を)頼みました?」と聞かれた。
「いえ、頼んでません」
「じゃあ一緒に食べにいきませんか」
鈴木さんは気さくな人で、よくこんなふうに誘ってくれる。気前もよく、僕は先日、東京でごちそうになったばかりである。
「いやあ、ひどい手を指しました。香を1つ上がるところを3段目に上がって…。指した瞬間に気づいた」と鈴木さん。いつもの実況解説だが、こちらは返事のしようがないから困ってしまう。
外食には西尾四段も同行し、駅前の寿司屋へ。昔、村山聖九段がよく通っていた店だ。鈴木さんはにぎり定職の”一人半前”を注文。ずいぶん食欲がある。
王将戦は午後4時過ぎに終わった。鈴木さんが「ひどい手」とぼやいた△1三香は結果的には悪手にならず、終わってみると振り飛車の快勝だった。
(中略)
鈴木八段に「これからどうするんですか」と聞いたら「東京に帰ります。それまで少し時間があるから夕休になったら一緒に食事をどうですか」と、また誘われた。今度は奨励会の津山三段が一緒だ。
鈴木さんの話は、いつ聞いても面白い。例えばこんな話。
「家でテレビを見てたら日本シリーズのCMに羽生さんが出てきたので、あっ、羽生さんだ、と言ったら、5歳の長男に”羽生先生と言いなさい”と怒られました」
「へーっ、すると家では森内さんや佐藤さんのことも、森内先生、佐藤先生と呼んでるんですか」
「いや、森内さん、佐藤さんと言ってますよ。羽生さんだけ”羽生先生”でないといけないみたいなんです」
「息子さんにとって羽生さんは特別な存在なんですねェ」
津山君からも面白い話を聞いた。山崎五段がマージャンにハマっていて、最近こんなことがあったという。
「山崎さんがリーチをかけたんですよ。字牌の単騎待ち。ところが、これがフリテンで、しかもカラテンなんです。場に全部、切れてる」
「えーっ!」
初心者のチョンボにもいろいろあるけれど、フリテン&カラテンとは初めて聞いた。笑うしかありませんね。
(以下略)
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字牌の単騎待ちは、かなり意外性のある待ちであることが多い。
しかし、フリテン(自分で既にその当たり牌を捨てている)なので、相手から当たり牌が出ても当たれない。
なおかつ、カラテン(この場合、自分で持っている1枚、自分で捨てた1枚、他の人が捨てた2枚の計4枚の所在が確認されており、山崎五段が必要とする牌はもう出てこない)。
フリテン&カラテン、私も字牌ではない待ちでやったことがある。
リーチをした後に気づくのだが、、、かなりな自己嫌悪に陥るものである。