2011年度A級順位戦食事メニューを分析する

今期のA級順位戦が終了した。

このタイミングで、それぞれの棋士の昼食と夕食のメニューがどのようなものだったか集計および分析をしてみたい。

(食事実績データは将棋棋士の食事とおやつによる)

羽生善治二冠

昼食

注文なし 8勝0敗

イレブンのランチ(エビフライとカニクリームコロッケ) 1勝0敗

夕食

上にぎり寿司 7勝0敗

肉なん定食 1勝0敗

エビフライ定食 1勝0敗

今期の羽生二冠は、”昼食:注文なし 夕食:上にぎり寿司”のパターンが、1局目から7局目まで続いていた。

羽生二冠にとっての前回の順位戦にあたる2007年度は、昼・夕食で”注文なし(出前ではなく外で食事する)”は1回もなく、昼食は鍋焼きうどん、夕食は上にぎり寿司とエビフライ定食が主力メニューだった。

そういう意味では、今期は、”昼食:注文なし 夕食:上にぎり寿司”という全くの新定跡が繰り返されていたことになる。

最終局で突然出てきたエビフライ定食は、2007年度のことを考えると全く不思議ではない。

羽生二冠は、明らかにエビフライが好きなのだと思う。

イレブンのランチ(エビフライとカニクリームコロッケ)は、大阪で行われた対谷川九段戦の時の昼食メニュー。(イレブンは関西将棋会館の1階にある洋食店)

谷川九段は、エビとカニを全くの苦手としているので、このメニューは谷川キラーとでもいうべきランチだ。

ちなみに、加藤一二三九段が毎回頼んでいるのは、特上にぎり寿司。

渡辺明竜王

昼食

銀ダラ定食 3勝0敗

うな重(梅) 2勝0敗

鍋焼きうどん 1勝1敗

注文なし 1勝0敗

ヒレカツ定食 0勝1敗

夕食

注文なし 4勝1敗

銀ダラ定食 2勝0敗

鳥せいろそば 1勝0敗

みそ煮込みうどん 0勝1敗

銀ダラ定食で負けなし。勝局7局のうち5局で、昼または夜に銀ダラ定食が注文されている。

渡辺竜王は、明らかに銀ダラが好きなのだと思う。

渡辺竜王の特徴は、

  • 昼食は出前、夕食は外で食べることが多い(唯一の昼食注文なしは大阪での対局)
  • うな重は昼に注文する(多くの棋士は、うな重を夕食で注文している)

の二点。

タイトル戦での昼食と同様、渡辺竜王の食事注文には筋の通ったポリシーが感じられる。

高橋道雄九段

昼食

みそ煮込みうどん 1勝4敗

豚キムチうどん 0勝2敗

イレブンのサービスランチ 1勝0敗

冷やしきつねそば 0勝1敗

夕食

さば味噌定食 0勝2敗

チキンカツ定食 0勝2敗

カレーライス 0勝2敗

肉じゃが定食 1勝0敗

みそ煮込みうどん 1勝0敗

スタミナ焼定食 0勝1敗

高橋九段の傾向は、昼食:煮込み系うどん、夕食:定食。

スタミナ焼定食は、2009年度4局→2010年度1局→今年度1局と減少傾向。

さば味噌定食は、2009年度4局→2010年度1局→今年度2局と微妙。

カレーライスは、2009年度0局→2010年度4局→今年度2局と、これも微妙。

今期最終局の新手、肉じゃが定食が来期、どこまで採用されるかが今後のポイントとなりそうだ。

郷田真隆九段

昼食

注文なし 1勝2敗

冷やし中華 2勝0敗

カレーライス 1勝1敗

ハンバーグ 0勝1敗

上ちらし寿司 0勝1敗

夕食

鍋焼きうどん 3勝2敗

注文なし 1勝0敗

カレーライス 0勝1敗

天ぷらうどん 0勝1敗

しょうが焼き定食 0勝1敗

郷田九段は、夏は冷やし中華、秋以降は鍋焼きうどんの採用率が高い。

そういう意味では非常に季節感にマッチしたメニュー選択となっている。

2~3年前と大きく異なる点は、親子丼や銀ダラ定食の注文がなくなったこと。

最終局のしょうが焼き定食は、2006年度(名人挑戦を決めた時)は5局で採用されていた。

来期の夕食では、鍋焼きうどんを軸として、銀ダラ定食、しょうが焼き定食、親子丼を併用するような姿を見てみたい。

三浦弘行八段

昼食

注文なし 1勝3敗

鍋焼きうどん 2勝1敗

本鴨鍋うどん 1勝0敗

イレブンサービスランチ(しょうが焼き) 1勝0敗

夕食

注文なし 1勝3敗

力うどん 2勝1敗

玉子丼 1勝0敗

一口カツ定食 1勝0敗

三浦八段は、”注文なし”よりも出前の方が明らかに分が良い。

名人挑戦を決めた2009年度は逆で、”注文なし”の勝率が高かった。

三浦八段も郷田九段と同様、鍋焼きうどんが主力メニューであるが、郷田九段の鍋焼きうどんは夕食でのみ、三浦八段の鍋焼きうどんは昼食でのみ注文されるところが大きな違い。

秋以降の三浦八段は、昼に鍋焼きうどん、夜に力うどんという組み合わせが多かった。

三浦八段は、蕎麦よりもうどんが好きなのだろう。群馬県は知る人ぞ知るうどんの名産地だ。

最終局の一口カツ定食は、ここ数年来の新手。

玉子丼は大阪での注文。

”三浦八段の玉子丼”については私の個人的な思い出があるが、それはまた後日。

丸山忠久九段

昼食

注文なし 2勝6敗

イレブンサービスランチ(一口ヘレカツ) 0勝1敗

夕食

うな重(松) 2勝4敗

注文なし 0勝2敗

若鶏しょうが揚げCセット 0勝1敗

ここ数年の丸山九段の定番は、昼食:麻婆豆腐定食・シューマイ、夕食:ヒレカツ定食だった。

そのパターンが今期は大きく変わった。

昼食は注文なしとなっているが、これは奥様手作りの弁当を持参してきているからと思われる。

それに伴い、夕食はヒレカツ定食からうな重(松)へとシフトした。

順位戦でのヒレカツ採用がなくなったのを補うように、竜王戦では夕方のヒレカツサンドの連採があった。

今期はフォーム改造期と言えるのかもしれない。

来期も、この組み合わせが続くと予想される。

谷川浩司九段

昼食

鍋焼きうどん 0勝2敗

おろしそば 1勝0敗

冷やし中華 1勝0敗

他人丼セット 1勝0敗

すき焼き重 1勝0敗

上親子丼 0勝1敗

親子南蛮そば 1勝0敗

親なん定食 0勝1敗

夕食

うな重(竹) 1勝2敗

うな重(梅) 2勝0敗

ハヤシライス 1勝0敗

ハンバーグステーキCセット 1勝0敗

焼肉Cセット 0勝1敗

他人丼セット 0勝1敗

行数が一番多いので、谷川九段はメニューをほとんど毎回変えていることが分かる。

複数回注文されているのは、東京遠征時の夕食のうな重(竹)とうな重(梅)と東西での鍋焼きうどん。

うな重(梅)がうな重(竹)よりも勝率が高いというのが興味深い結果だ。

上親子丼は、2010年の私の順位戦お薦めメニュー(記事最下段参照)だったのだが、今期のA級での採用は谷川九段のみだった。

久保利明二冠

昼食

イレブンのサービスランチ(エビフライとカニクリームコロッケ) 1勝1敗

イレブンのサービスランチ(一口ヘレカツ) 1勝1敗

注文なし 0勝2敗

イレブンのサービスランチ 0勝1敗

イレブンのサービスランチ(サーモンステーキとクリームコロッケ) 0勝1敗

イレブンのサービスランチ(珍豚美人) 0勝1敗

夕食

注文なし 1勝3敗

親子丼 1勝2敗

親なん定食 0勝1敗

うどんセット 0勝1敗

久保二冠と言えば、昼食:注文なし、夕食:親子丼がこれまでの定番だった。

夕食の親子丼は、2010年度が5局(3勝2敗)、2009年度が8局(6勝2敗)の採用だったものの、今期は3局(1勝2敗)のみ。

また、昼食の注文なしも、2010年が6局(2勝4敗)、2009年度が9局(B1:9勝3敗)だったのが、今期は2局(0勝2敗)のみ。

注文なしの2局は東京で行われているので、久保二冠の昼食は、”注文なし”からイレブンのサービスランチに完全にシフトが行われていることが分かる。

丸山九段と同様、フォーム改造期と言えるのかもしれない。

佐藤康光九段

昼食

注文なし 3勝3敗

きつねうどん 1勝0敗

冷やしたぬきそば 0勝1敗

イレブンのサービスランチ(エビフライとカニクリームコロッケ) 0勝1敗

夕食

うな重(梅) 2勝1敗

上にぎり寿司 0勝3敗

注文なし 2勝0敗

きざみうどん 0勝1敗

佐藤九段は、羽生二冠とは逆に、上にぎり寿司でなかなか勝てない。また、谷川九段と同様、うな重(梅)での勝率が良い。

佐藤九段は、勝った時の食事を次局でも続け、負けるとメニューをチェンジする注文傾向がある。

今期の夕食は、

上にぎり寿司●→上にぎり寿司●→注文なし〇→注文なし〇→うな重(梅)●→うな重(梅)〇→うな重(梅)〇→きざみうどん(大阪)●→上にぎり寿司●

の推移。

今期は、連続2局での勝敗傾向を見定めてメニュー変更を行っているように見える。

この流れで言えば、最終局はうな重(梅)を頼むのが自然だったように思える。

屋敷伸之九段

昼食

注文なし 5勝4敗

夕食

注文なし 5勝4敗

屋敷九段の”注文なし”は以前からの定跡。

記録によると、順位戦では、2006年度と2005年度に夕食で1回ずつカレーラースを注文しているのみだ。

来期も屋敷九段の”注文なし”は続くものと思う。

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(ご参考)

2009年度順位戦食事別勝敗統計(概要)

2009年度順位戦食事別勝敗統計(食事分類編)

2009年度順位戦食事別勝敗統計(個別メニュー編)

※食事実績のEXCELへのデータ貼り付け(入力)が想像以上に大変だったので、昨年からは順位戦全体での勝敗統計は行っていません。