先崎学五段(当時)「羽生さんに教えてもらう機会なんて、めったにないからもう一番指す一手でしょう」

将棋マガジン1990年2月号、河口俊彦六段(当時)の「対局日誌」より。

 午後10時30分、千日手が成立した。

 深夜の指し直しになるが、大山は体力でも負けない、の自信があった。でなければ、打開しただろう。結果論になるが、指し直しになれば負ける、と疲れの自覚があれば、寄せに行き、勝てたかも知れない。研究では寄っていた。

 それを指し直そうというのは、負けなければ、の考え方で、体力だけでなく、棋力にも自信がある証拠である。

 比べるのもおこがましいが、あえて書けば、私も羽生戦で同じ経験をした。勝ちありと読んで寄せにかかったら、千日手含みで粘られた。そのとき、私は、指し直しになれば負ける、ここで寄せ切る以外にチャンスはない、の強迫観念にとらわれ、千日手をさけることしか頭になかった。結果は寄せがなく、受けに回って、敵陣一段目まで玉が逃げたが、チェスでないから、そうなったからといって勝ちではない。

 先崎いわく「羽生さんに教えてもらう機会なんて、めったにないからもう一番指す一手でしょう」。

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クイズ番組で、9問連続正解。

10問目、正解なら200万円獲得、外れれば賞金額ゼロ。

10問目を見たら、とても迷うような問題だった。

ところが、今、10問目の解答を放棄して、もう一度、違う問題を1問目からやり直す道もある。

このような時、どちらを選ぶか。

ほとんどの人は目の前の10問目にチャレンジ、を選ぶと思う。

しかし、問題を出してくれる司会者が、大ファンの超美人女優だったなら・・・

非常に迷うところだ。