将棋マガジン1993年9月号、鹿野圭生女流初段(当時)の「タマの目」より。
先日、南九段の結婚式に行って来た。出席者は100人程。棋士ではご夫妻で出席されている方が多く、女性が多いせいと、もちろん南先生の人柄もあり、とても和やかな披露宴だった。まずは、その披露宴でのお話。
☆来賓祝辞
某市議会議長「新郎のミナミヨイチさんはギシであり、ギセイ位を獲られた事もある・・・(以下略)」
(出席者は、お互いの顔をチラチラ見ながらうつむいて笑いをこらえている)
☆スピーチ
福崎八段「ミナミヨイチさん結婚おめでとう・・・」
(場内大爆笑)
神崎五段「僕は初めて南先生と知り合った時、”こんな人が世の中におるんか”ちゅーショックを受けました。僕が口数の多い方だけに、こんなに無口で将棋指しているという人とつきあってもおもろないんちゃうかと思ったら、たまに言うジョークが普段無口なだけにおもしろいです」
☆カップリング
阿部、村山、本間、有森、平藤、の独身五人組がセンターテーブルで南先生の奥さんの友人五人と同席している。南先生も粋な計らいをしたものだ。がしかし・・・。
タマ「あのテーブルだけ静かやね」
浦野夫人「あれはカップリングやわ。あれじゃダメやから、主人にチャチャ入れに行かせましょっ」
(その後、すぐに浦野六段が場を取り持ちにでかけていた)
☆女達の会話
福崎夫人「その服素敵ね」
タマ「あら、睦美さんこそ、近くで見ると、ウワー高そう」
福崎夫人「なるべく普通に着れる服にしたのよ」
井上夫人「この服、買ってもらってん。谷川先生んとこの奥さんも今日のために買ってもらったて言うてはったよ」
タマ「皆、大変やってんね」
井上夫人「髪もしっかりスプレー当ててもろたからバリバリよ」
タマ「浦野さんの奥さんはセットに五千円もかかったのにもうくずれてきた、て文句言うてはったわ」
(女同士はこの手の話に尽きる事がない)
☆お色直し
司会者「それでは、新郎新婦はしばらくの間、お色直しのため、席をはずさせて頂きます」
(BGM)
司会者「新郎は、もう少し嬉しそうになさって下さい」
(顔が緊張してこわばっていた南先生だったが、この一言で、ニコニコッと南スマイル)
(場内大爆笑)
☆披露宴その後
大半の出席者「あーおもしろかった」
(寄席に来たわけじゃないって)
タマ「ねー井上さん。お茶でも行きましょうよ。今月のネタがないねん」
井上六段「ワシまた変な事書かれるん、いやですわ」
タマ「まぁそう言わんと、行こー」
(と説得して、お茶に誘う事に成功。井上夫人と野田四段の4人で喫茶店へ)
☆ティータイム
井上「最近、車買いましてん」
タマ「ヘー。運転久し振りでしょ。大丈夫ですか」
井上「教習所で4時間復習させてもろたんですけど、やっぱりちょっとあきまへんわ」
井上夫人「今日も家から5分位の美容院に車で迎えに来てもろてんけど帰るんに30分以上かかってん」
野田四段「そんなややこしいトコなん?」
井上「いや、ようわからんのですわ。川があったり、山が見えたりしてましてな」
タマ「家の近く位知っとかんとあきませんよ。二人でドライブとかせえへんの?」
井上夫人「だって、地図見られへんもん」
タマ「うーん、わかるような気がする」
井上夫人「そうそう最近麻雀覚えてん。鹿野さんも遊びに来て。駅まで車でお迎えに行くし」
タマ「ウーム。一抹の不安が・・・」
(以下略)
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地蔵流・南芳一九段。
”よしかず”を”よいち”と読みたくなる気持ちは・・・分からない。
福崎文吾九段の斬り込みが鋭い。
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私の周りだけのことなのかもしれないが、披露宴に出席した新郎の友人と新婦の友人が結婚へ至ったという話を聞いたことがない。
通常は、披露宴のテーブルで一緒になるということは少ないので、知り合うとしたら二次会。
やはり、結婚式に呼ばれるほどの関係の知人の伴侶の友人ということになると、何かと失礼があってはマズイということで敬遠してしまうものなのかどうか。
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それにしても井上慶太七段(当時)は、揺さぶればネタがどんどん降り落ちてくるような存在。
絶対に面白い。