近代将棋1991年5月号、林葉直子女流名人・王将の「直子の将棋エアロビクス」より。
同じ出したものでも、そのまわりの状況によって、見る側の感情は大いに変わってくる。
例えば、舌・・・。
眉根を寄せ、鼻にシワを寄せて出した舌はアッカンベー・・・。
それを見た者は「なんだ、この野郎」という気になる。
ところが、肩をすくめ恥ずかしげな目をして出した舌は「ゴメン、失敗しちゃった・・・」ということを態度で表したもので、見ている側は「うふっ。カッワイイ・・・」と思うくらいで悪感情を抱くことはない。
それと同列に扱うのはどうかと思うが、むっちりとした白く美しい太股・・・。
これが短パンの先から出ているのと、ミニスカートの先から出ているのとでは、見る側の感情は大いに異なる。
女性の私が見てそう思うのだから、男性にとってはさぞや・・・と思われる。
どんなに美しい脚でも、短パンの先から出ているそれは、見る側にとっては人間の歩行に必要なただの脚にしかすぎない。その脚の中で、ま、型のいい脚だわね、という気持ちが起きるくらいである。
そして、このときの視線は、短パンのほうから脚先に向かってサラリと流れる。
ところが、ミニスカートから太股が出ている場合、その脚が美しければ美しいほど、そして、ミニスカートが短ければ短いほど、見ている側の心臓はドキン!とし、目はキョロキョロと落ち着きを失う。
つまり、そのときの視線は、足先からミニスカートの中に向かって、柳にとびつく蛙のように、鋭い突進をくり返すのである。
短パンにせよミニスカートにせよ、そこから出ている太股の範囲は同じなのに、どうしてこうも見る側の気持ちが違うのだろうか。
その辺の詳しい解釈は心理学者の解説をまたねばなるまいが、林葉直子流解釈によるとこうである。
例えば、ン億円の現金があったらなァと思っていても、現金輸送車がそばを通ったからといって、それを襲おうなどという気はまずフツーの人間には起きっこない。
ところが、目の前に1万円札が落っこちていて、まわりに誰もいないとなるとネコババしたい!という気が起こってくるのは否めない。交番所に届けるかどうかは、各人の理性の問題ということになる。
短パンとミニスカートの関係も同じようなものだ。
短パンはズボンを短くしたものである。
だから、出た太股を上にたどって行ってもその先は行き止まり!ということが明らかである。いくら目で探りを入れても、とてもその中味まで視線は届きっこないのだ。つまり、フツーのひとは、短パンをはぎとってまで中味を見るということはまずしない。現金輸送車を襲わないのと同じ原理だ。
ところが、ミニスカートは違う。
太股をたどって視線を上に向ければ、視線はミニスカートの下をくぐって行きつくところまで行ける可能性がある。相手の動きに乗じてこちらがそれなりの姿勢をとればバッチリみえる!ことは間違いないのである。
そうするかしないかは、拾った1万円札を交番に届けるか届けないかと同じように、各人の理性によるのみだ。
いかがであろうか、直子解釈・・・。
ともあれ、このように同じ露出度の太股でも、短パンから出ているそれとミニスカートから出ているそれとでは、それを見る側の感情に大きな差異があることがわかっていただけたと思う。
えっ?なんですって・・・。
「そんなことは、女のお前から言われなくても、男の俺たちは先刻ご承知だい!」ですって・・・。
そうですよね・・・。フム。男性側からすればそんなこといちいち言われるまでもないですよね・・・。
でも・・・。私がわざわざここにこのテーマを持って来たのは、ミニスカートだと女性の私たちでさえも見る側に立った場合、ドギマギすることがあるからなんです。
ま、聞いてください。
あれはレディスオープントーナメント戦が初めて女流棋戦となったときのこと―
第1回戦の私の相手は、K女流であった。
彼女は20ン歳の女盛り。顔はいいし、スタイルはいいし、女の私でも憧れてしまうようないい女。
その彼女と対局室に入る前に会ったとき、彼女が皮のタイトのミニスカートをはいていることを知った。
しかし、そのときは、「わあっ、カッコイイ!」ぐらいに思った程度で、視線をスカートの中までくぐらせようなどという気はサラサラ起きなかった(あたり前?!)。
ところがである。
対局室で将棋盤をはさんで向き合ったときであった。
相手の駒を見る私の視線の延長上に、白く艶やかなKさんの太股があるのである。それも、正座しているため、ミニスカートはズリあがり、太股は大きく露出しているのだ。
私はあわてて視線をそらした。
とはいえ、対局である以上、相手の駒を見ないわけにはいかない。駒を見る。考える。その度にチラリと視線を上げると―、
ゲゲッ!み、見えそうなのである、奥が。
私はドギマギした。ドギマギして視線をそらす。気を取り直して、また考える。考えるときの癖でチラリと視線を上げる。と、見える!あわてて目をそらす・・・。
このくり返しで、頭はかなりパニックに陥ったものだった。
私は新人王戦や王座戦で男性棋士の先生方と対戦する機会を与えてもらっている。それなのに、いまだに一度も勝たしてもらえない。
実力で勝てないのなら、何かほかの方法で相手の頭を混乱させる方法はないものか、などとヒキョーなことを考えているとき、ふとKさんのミニスカートを思い出したのである。
女性の私ですら戸惑ったのである。男性が戸惑わないはずがない。
うふふふ。そうだわ、そうよ、この手があったのよ[E:heart01]
みなさん、次回の新人王戦、王座戦、期待していてくださいねっ[E:heart02]
林葉直子は、超ミニで挑戦いたします!!
見てチョーねっ[E:heart01]
立て膝にしようか、斜め横座りにしようか、作戦を練っている
林葉直子でした[E:heart01]
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石田和雄九段が奨励会時代、当時奨励会員だった現在の蛸島彰子女流五段との対局中、前かがみになって必死に考える蛸島女流の見えてしまいそうな胸元に動揺して、悪手を連発してしまったという有名な話がある。
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ミニスカートと短パン、それぞれから出てい太股、その違いに思いを巡らしたことは一度もなかったが、どちらにしても、男性から見たらドキドキするものであることには間違いない。
キュロットスカートならどうなのか、チャイナドレスも捨てがたいのではないか、バニーガール姿だったらどう説明するのか、などいろいろと議論は起きてくると思うが、とにかくそういうことだ。
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林葉直子女流名人・王将(当時)は、この年の夏に行われた第1期銀河戦本戦Bブロック1回戦で、故・椎橋金司五段(当時)に勝っている。
当時の映像は、囲碁将棋チャンネルで提供している「将棋ビデオ(月額525円など)」で見ることができる。
林葉さんのスカートの短さはミニではないが、決して長くもないといったところか。