名人位の賞金総額を推計する

将棋世界1991年8月号、「将棋界マネーアラカルト」より。

 今年の名人戦は、中原名人が挑戦者の米長九段を降して防衛を果たした。さて、気になるのはその賞金の中身だ。竜王位は3,200万円(今期より)と明示されているが、名人位の場合は計算方法が少々ややこしい。

 まず七番勝負の対局料。これは他のタイトル戦と同様に、ワンセットいくらで局数は関係ない。名人は1,050万円(金額はいずれも推定)、挑戦者は450万円と定額である。7局フルに戦うと、名人の一局単価は150万円だ。今年は4勝1敗の5局なので約200万円になる。

 そして名人になると、1,200万円の賞金を獲得できる。敗者は4分の1の300万円。当然ながらどちらが勝っても同額である。

 これを対局料と合計すると、名人防衛で2,250万円。挑戦者奪取は1,650万円の数字となる。天下の名人位にしてはちょっと安い感じがするが、実際はそれだけではないのだ。

 順位戦の対局料は各棋士とも月給のように12ヵ月に等分されて支給される。この手当が順位戦を指さない名人にも、じつは支払われている。その金額は月額で約100万円。A級棋士より5、6割ほど高い。つまり、これも姿を変えた賞金なのである。

 月々の名人手当の1年分、名人戦七番勝負の対局料、名人位の賞金。これらの合算が名人の賞金と考えてよいだろう。今年の場合は3,500万円近くになる。

 竜王戦で竜王位を獲得すると、3,200万円の賞金のほかに予選本戦の賞金、対局料が加算されて、総計でたぶん4,000万円ぐらいになる。金額面では竜王位の方が上のようである。

 だが、名人は、他棋戦の対局料に若干のプラスアルファがつくなど、諸々の特典や付加価値がついてまわる。名誉だけでなく実利面でもやはり大きい。

 その名人と竜王をダブルで獲得したら―。前にもこの欄で書いたが、1億円プレイヤーの出現も夢ではない。それを果たすのは中原か谷川か?はたまた何年後かの羽生や森下、屋敷の若手か。

 日本のバブル経済ははじけたが、将棋界のと金経済は大きく発展させたいものである。

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将棋界では、竜王戦以外は賞金額・対局料などが開示されてはいないので、この記事は非常に貴重なものと言える。

名人防衛は2,250万円、名人防衛失敗が1,350万円、名人奪取は1,650万円。(名人手当除く)

現在は、棋士に給料的なものがなくなっており、1991年頃と単純に比較はできないが、名人に対する賞金総額の考え方はあまり変わっていないのではないかと思われる。

1991年当時、名人防衛で2,250万円(名人手当除く)、竜王防衛が4,100万円。

2013年現在、竜王を防衛すると4,800万円(勝者賞金4,200万円、対局料600万円)。

竜王防衛の場合の2013年の賞金総額は1991年と比べて1.17倍。

名人防衛の場合の賞金総額も同じ伸び率と仮定すると2,634万円。

的外れである可能性も高いが、現在の名人防衛時の賞金総額は2,500~2,650万円と推測できる。

これにA級順位戦対局料の1年分を上回る手当が加わる形だろうか。

この手当が1991年と変わってないとして、総額3,700~3,850万円。

この総額を獲得できるのが、今年であれば森内俊之竜王名人。

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ところで、森内竜王名人の今期の竜王戦での賞金・対局料総額も計算してみたい。

森内竜王名人の第26期竜王戦での戦績は次の通り。

1組ランキング戦

対深浦九段戦 ◯(対局料非公開)

対郷田九段戦 ◯(対局料非公開)

対佐藤(天)七段戦 ◯(対局料非公開)

対佐藤(康)九段戦 ●(1組準優勝賞金110万円)

決勝トーナメント

対谷川九段戦 ◯(115万円)

対羽生三冠戦 ◯(160万円)

挑戦者決定三番勝負

対郷田九段戦 ●◯◯(440万円)

竜王戦七番勝負

対渡辺竜王戦 ◯◯●◯◯(勝者4,200万円)

公表されている賞金・対局料を合算すると、5,010万円。

これだけでも、竜王を防衛した時の獲得賞金総額よりも大きいことになる。

森内竜王・名人が、名人戦と竜王戦で獲得した賞金・対局料合計は推定で8,710万円以上。

森内竜王名人の2013年の獲得賞金・対局料は、1億円を超えることは確実と言えるだろう。