窪田義行六段から貴重なコメントをいただく

昨日の記事「郷田流振り飛車の捌き」で、「3図から▲5五歩△同歩▲6四歩の後、△7六歩とされた時の変化はわからないが」と私が書いた箇所があったのですが、この疑問について、窪田義行六段から貴重なコメントをいただきました。

昨日の3図とは下の局面。

郷田振飛車3

解説では、「3図からの▲5五歩が会心の一手だった。8七の角が後手玉をにらんでいるため、△同歩は▲6四歩の王手が厳しいし、△5五同竜は▲7七角で竜を殺せる」とあり、ここから本譜は▲5五歩△8六竜▲5四歩△6二銀▲8三歩と進むのですが、▲5五歩△同歩▲6四歩の後、△7六歩とされた時の変化が私には分かりませんでした。(A図)

窪田1

この疑問に、窪田義行六段が答えてくれたわけです。

(窪田六段からのコメント)

窪田義行

2015年3月25日 09:11 に投稿
相変わらずですが興味深く拝見しています。
最近は[将棋アンテナ 棒銀くん]が便利なので“人気”タブのタイムラインから遷移しています。
郷田九段の三間飛車と、親交の深い中田(功)七段の[コーヤン流]との類似点が気になりますが、前者のサンプル数がもう少し増えて欲しいですね。

>▲5五歩△同歩▲6四歩の後、△7六歩とされた時の変化はわからないが、

57手目▲5五歩に△同歩▲6四歩に△2二玉なら▲9八角打!と二人掛かりで狙撃して決まります。
△7六歩は当然の踏ん張りで、私も拝読当時に疑問を抱いたかも知れませんが現在でもやはり先手不満です。
今度▲9八角打なら△7五銀で完封されますので、▲6一角△6二金▲3四角成と一荒らしする位ですが、△7五銀▲6七馬△6四龍といなされて▲6四歩の一手を逆用された懸念があります。
8七角の睨みは後程開放する事にして、▲5四歩△6二銀(△同銀や△6四銀は▲7一角)▲7七角△7五龍に▲5五角と飛び出し、▲7二歩成△同飛▲9一角成と▲4五歩の両天秤を掛けて先手が指せます。
以下△8六龍に▲8三歩が調子良く、△同飛は▲7二歩成でと金が残り、△同銀も▲7二歩成△同飛▲9一角成で△8五龍に▲8一馬が成立します。
先手は歩切れになる分本譜より心細い点がありますが、▲6四歩の突き出しで後手陣を乱しつつ補充できるのが強みです。
因みに▲5五歩にいきなり△7六歩もありましたが、▲6一角△6二金▲3四角成△4三金▲6七馬△同龍▲同銀△7七歩成▲5四歩△同銀▲5一飛△8七と▲5五飛成の強襲があります。
又は▲5四歩△6二銀▲8八角△7五龍に▲4四角と肉薄し、△3三桂▲3五歩の玉頭戦も考えられます。
個人的には、8七角を封じ込まれた物の反動を抑えて攻め込める後者がお勧めです。
後手としては▲5五歩△同歩▲5四歩の変化共々、華麗な両取りを被る展開に比べればましだったでしょう。
本譜は8七角と8六龍が睨み合ったまま長引きましたが、角いじめの猶予を与えず△8七龍の非常手段をも見切った先手が、大差を付けて寄せ切った訳です。

以上、ご参考になれば何よりです。

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窪田六段の解説を局面図を交えながら追っていきたいと思います。

(窪田六段)57手目▲5五歩に△同歩▲6四歩に△2二玉なら▲9八角打!と二人掛かりで狙撃して決まります。

これは3図以下、▲5五歩△同歩▲6四歩△2二玉▲9八角の、振り飛車側にとって最も嬉しい変化。

窪田2

(窪田六段)△7六歩は当然の踏ん張りで、私も拝読当時に疑問を抱いたかも知れませんが現在でもやはり先手不満です。
今度▲9八角打なら△7五銀で完封されますので、▲6一角△6二金▲3四角成と一荒らしする位ですが、△7五銀▲6七馬△6四龍といなされて▲6四歩の一手を逆用された懸念があります。

A図から▲6一角△6二金▲3四角成△7五銀▲6七馬△6四龍の局面(B図)。

窪田3

(窪田六段)8七角の睨みは後程開放する事にして、▲5四歩△6二銀(△同銀や△6四銀は▲7一角)▲7七角△7五龍に▲5五角と飛び出し、▲7二歩成△同飛▲9一角成と▲4五歩の両天秤を掛けて先手が指せます。

窪田六段の提案は、3図から▲5五歩に△同歩なら▲6四歩ではなく、▲5四歩!(C図)

窪田4

ここから△同銀でも△6四銀でも▲7一角があるので、△6二銀。

そして、▲7七角△7五龍▲5五角(D図)。

窪田5

ここから先手は、▲7二歩成△同飛▲9一角成と▲4五歩の両方を狙えるということです。

(窪田六段)以下△8六龍に▲8三歩が調子良く、△同飛は▲7二歩成でと金が残り、△同銀も▲7二歩成△同飛▲9一角成で△8五龍に▲8一馬が成立します。
先手は歩切れになる分本譜より心細い点がありますが、▲6四歩の突き出しで後手陣を乱しつつ補充できるのが強みです。

D図以下、△8六龍▲8三歩(E図)

窪田6

ここから△同飛なら▲7二歩成。△同銀なら▲7二歩成△同飛▲9一角成△8五龍▲8一馬で先手よし。(F図)

窪田7

(窪田六段)因みに▲5五歩にいきなり△7六歩もありましたが、(中略)▲5四歩△6二銀▲8八角△7五龍に▲4四角と肉薄し、△3三桂▲3五歩の玉頭戦も考えられます。
個人的には、8七角を封じ込まれたものの反動を抑えて攻め込める後者がお勧めです。

▲5五歩にいきなり△7六歩とは次の局面(G図)。

窪田8

この場合は、▲5四歩△6二銀▲8八角△7五龍に▲4四角△3三桂▲3五歩。(H図)

窪田9

窪田六段、ありがとうございました。

疑問は氷解しました。

本当に奥の深い変化です。