将棋世界1999年2月号、女流棋士情報『「高校は行かない」の声に、うれしい悩み!? 藤森奈津子女流二段』より。
小学5年生の男の子と2年生の女の子を持つお母さんでもある、藤森奈津子女流二段。
長男哲也君は大の将棋好き、アマ四段の実力の持ち主である。お母さんが中心になって3年半前から指導している子供将棋教室(東京・JR蒲田駅近くにある団地の集会室で開催)をすでに”卒業”し、現在は、蒲田将棋クラブに通って腕を磨く日々。
「学校帰ってから、ほとんど毎日のように飛んで行って、7時か8時頃まで将棋指しているんじゃないかしら。いないと思ったら、クラブ行ってますから。たまにトーナメントに勝ち進んで遅くなった日は、父親が迎えに行ってます。私が席料置いていくのを忘れてから、いまは1ヵ月ごとの月極めの会員になっています」
藤森女流二段といえば、独身時代からNHK将棋番組の顔。現在はNHK杯戦の司会を務めている。そんなお母さんを見て育ち、羽生善治四冠ファンの哲也君は、「お母さんは、羽生さんに会ったことあるの?」と聞いたりもしたそうだ。
たまたま電話で哲也君にコメントをもらえるチャンスがあって、聞いたところ、決して勉強、勉強とうるさく言うお母さんではないそうだ(将棋を覚えたての頃は負けると泣いていたという哲也君、電話の応対も礼儀正しく、しっかりしていた。藤森女流二段は躾はきちんとする一方で、のびのびと育てているのだろう)。
ただ将棋に熱中するあまり、学校の勉強がわからなくなったら困るヨというのがお母さんの姿勢。で、哲也君は塾にも通っている。
哲也君の将来の夢は、もちろんプロ棋士。
「高校は行かない」ともらすこともあるそうな。まだ中学生にもなっていないわが子のこの言葉に頼もしさを感じながらも、将棋界に身を置くお母さんとしては道のりの厳しさを知っているだけに戸惑うやらで、
「それまでにプロになれるくらい強くなったら、行かなくてもいいヨと私も子供に対してはったりをきかせて、言っていますけど…。基本的には、高校に行ってほしいですね」
当座の目標は、小学校名人戦。前回は惜しくも東京予選止まりで、テレビ出演に手が届かなかった。目指すは、優勝!3月に行われるその日に向けて、お父さんと指したり、さらに前進中の哲也君を見守る藤森女流二段の雰囲気は、あくまでふんわりである。
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藤森哲也四段は、高校に行かないという夢は叶わなかったものの、2014年度の勝率は6割9分に迫るなど、邁進を続けている。
藤森四段は明るく爽やかなキャラクターで、加山雄三さんが演じた「若大将」のような雰囲気を持っていると思う。
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「お母さんは、羽生さんに会ったことあるの?」は、やはり最低一度は聞いておきたい質問だ。
私も子供の頃、地方公務員だった父に「親戚で誰か芸能人はいないの?」と質問したところ、親戚にはいないが、父の北海道の友人の姪が太地喜和子という女優であると教えてくれた。
当時は何も知らなかったのでほとんど感動しなかったが、今思えば、凄い父の友人だったということになる。
それにしても、子供の頃の私は、なんとミーハーだったのだろう。