近代将棋2005年4月号、村山慈明四段(当時)の「定跡最前線特捜部」より。
創作次の一手問題を見るたびに、「こんな都合のいい手順、実戦ではまずありえない」と想っていた。ところが……。まず下の図面を見て頂きたい。
この局面は某豪邸で行われている研究会の行方-F戦の終盤戦である(後手の先生は本人の希望によりイニシャル)。すでに両者30秒の秒読みに入っているがここからの行方七段の指し手はまさに「実戦次の5手」だった。
その前にこの局面でF先生の読み筋を記しておくと(手順にヒントが隠されている)図から▲4二角成△7六桂▲7七玉△5六銀不成(好手)▲6四角成△6七歩成▲8六玉△8五銀▲7五玉△7四歩▲同馬△同銀▲同玉△(▲6四玉なら詰みはないが△5二金▲5四玉△3五角で勝ち)△6五銀▲6四玉△4二角▲5三合△6三歩▲7五玉△5三角まで詰みというもの。
途中△5六銀を不成で取るのが妙手だ。勘の良い方ならもう正解手順はお気付きだろう。
実戦は次のように進んだ。▲4二角不成!△7六桂▲7七玉△5六銀不成▲6四角不成!△6七歩成▲8六玉△8五銀▲7五玉(打ち歩詰め図)以下先手勝ち。
何と角不成の二段活用、先手玉はすれすれ打ち歩詰めで逃れている。しかしやはり創作と実戦は違うようで、まだ後手にも勝機があったようだが、F先生は「いや~こんなすごい手食らったら勝てませんよ。お見事!」と、行方七段の絶妙手順を称えていた。
行方七段の終盤力(才能?)に脱帽です。
(以下略)
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行方尚史七段(当時)の、2度にわたる絶妙な角の不成。
まるで、『巨人の星』の大リーグボール3号を見ているような気持ちになる。
そういう意味では、フワフワとした魔球のような▲4二角不成と▲6四角不成。
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この講座に登場しているF先生と村山慈明四段(当時)は、奇しくも、昨日発表になった第27回将棋ペンクラブ大賞技術部門で大賞と優秀賞を受賞している二人だ。