じわじわ感動する次の一手

将棋世界のバックナンバーの昇段コースの問題をざっくりと見ていて、非常に感銘を受けた回。

実戦でも役に立ちそうな、私にとってはあまり意識していないなかった手筋ばかり。

すべての出題は故・加藤博二九段。

将棋世界1982年11月号、初段コース、二段コース、三段コース、四段コースより。

(解答・解説・コメントは記事の下半分にあります)

〔初段コース〕

加藤博二1

加藤博二2

〔二段コース〕

加藤博二3

加藤博二4

加藤博二5

〔三段コース〕

加藤博二6

〔四段コース〕

加藤博二7

 

 

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解答・解説・コメント

〔初段コース〕

加藤博二1

正解 ▲3三歩成 (正解率68%)

このような形の場合の正解は▲3三歩成であることが多いのだが、この問題は5手先まで読まなければ正解に到達しない。

▲3三歩成に△同角や△同桂は▲2三飛成で先手優勢。

そのため後手は△同飛と取ることになるが、そこで▲2四歩と合わせるのが決め手。以下△同歩▲同飛△3二飛▲2三飛成で先手優勢。

言われてみれば全くその通りであるが、▲2四歩からの十字飛車はすぐには気がつきにくい手筋。

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加藤博二2

正解 ▲2二金(正解率61%)

△同角は▲5一飛成△同玉▲5二金まで、△4二銀は▲5一金△同銀▲3二金で、いずれも詰み。なので△同金しかないが、▲同飛成△同角▲4三金で必至。(△3二飛と受けても▲4二歩以下詰み)

部分的に現れるかもしれない形なので、覚えておいて損のない手順だ。

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〔二段コース〕

加藤博二3

正解 ▲8二歩(正解率61%)

▲8二歩に対し△8三飛は、▲6一飛△5一銀右▲8一飛成△8二金▲9一竜△8六飛▲8八香で先手勝勢。

したがって後手は△同金と取るが、以下▲8三歩△7二金▲6一飛△5一飛▲8二歩成。

△同金は▲6二飛成、△6一飛は▲7二とで後手陣は崩壊。

これは非常に参考になる手筋だ。部分的によく出てきそうな局面なので、この攻め筋を知らないと大きなチャンスを逃してしまう。

▲6一飛と打つ直前の局面(A図)が初段コースの問題として出たこともあるほど。

加藤博二8

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加藤博二4

正解 ▲7二銀(正解率63%)

▲7二銀には△同玉の一手。そして▲6一とと入って後手玉は受けなし。

▲6一とがなかなか思い浮かばない。

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加藤博二5

正解 ▲8三銀(正解率25%)

△同金と取らせて▲7五桂が急所で一気に寄り形になるという。以下

△7四金右は▲8三歩成△7一玉▲6三桂成。

△8四金は▲同飛△7一玉▲6三桂成。

△7二銀は▲8三歩成△同銀▲8四飛△7一桂▲8三飛成△同桂▲6三桂成

で、いずれも先手必勝。

正解手▲8三銀に対して△7一玉は、▲7二銀成△同玉▲6四桂△同金▲同飛で、やはり先手必勝。

なお、6図で▲7五桂(応募数の72%の解答)は、△7四金▲8三銀△7一玉▲7四銀成△6二玉▲8三歩成△5三玉と脱出され、先手敗勢。

郷田真隆王将の若い頃の名言「良い手は指が覚えている」というのは▲7五桂のようなことを言うのだろう。

今回の出題の中で個人的に最も感動した問題。

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〔三段コース〕

加藤博二6

正解 ▲9三歩(64%)

後手の攻めは無理攻めだという。▲9三歩以下、△同飛▲6五歩△9四飛▲9五香△同飛▲8四角△9二飛▲7三角成で、先手優勢。

▲9三歩以下△同飛▲6五歩までは読むが、△9四飛と上がられて何もないなと私レベルの実戦なら読みを打ち切ってしまうところ。ところが▲9五香~▲8四角がある。

〔四段コース〕

加藤博二7

正解 ▲4二金(正解率23%)

難問。▲4二金に△4八との攻め合いは、▲5二金△5八とに▲7一角以下の詰み。

▲4二金に△同金は、▲7一角打△9二玉▲4二飛成△8二金▲5一竜△7一金▲同角成△9四歩▲6二金で一手一手。

普通、4二のような暑苦しいところに駒を打とうなどとは微塵も考えない。ところが▲4二金が決め手になるのだから驚き。