名人戦指し直し第6局2日目午後、おやつを注文しなかった加藤一二三十段(当時)

将棋世界1982年8月号、毎日新聞の加古明光さんの第40期名人戦七番勝負〔加藤一二三十段-中原誠名人〕指し直し第6局盤側記「加藤十段、名人位に王手!」より。

 2勝2敗1持将棋、1千日手と全く譲らぬ状況のまま、指し直し第6局は6月22、23日、東京・紀尾井町の「ホテル・ニューオータニ」で行われた。世界に知れ渡っている大ホテル。収容人数3,800人のほか、アーケードやパーティに出入りする人などを含めると、このホテルが一つの街である。だが、この大きな”街”にも対局にふさわしい和室は二つしかない。一つは、春の王将戦で大山が中原と対したタワーの和室。もう一つが本局の行われた本館15階の部屋である。

(中略)

 加藤に直接ただしたわけではないが、加藤は封じ手番をあまり好まないようだ。5七角で一日目終了。何でも食べられる大ホテル。加藤は「一人で適当に食べてきますから」と夕食注文を断った。昼に「なだ万」の天ぷら定食をとったピンさん、この夜は何を食したのだろう。中原は関係者とそろって庭園内にある清泉亭でバーベキュー。この夕食がなかなか味なもので、談笑しながらの食事は2時間近くにも及んだ。

(中略)

 3時ごろにはおやつの注文をとる。これまで加藤のおやつはカマンベールチーズにトマトジュース、フルーツが定跡化していた。昨日も同じものをとっている。そのピンさんが―。「私はいりません」と言った。普通の人なら何でもないが、これはビッグニュースである。今シリーズもちろん初めてだ。控え室の話題は他愛ないもので、検討の他は、こんなことがニュースになる。「どうしたのかな、ピンさん」「ヤル気満々じゃないのかな」エトセトラ。ちなみに中原はチーズケーキ、紅茶になぜか、パパイヤ。

(中略)

 力の入った好局だった。寄せ合いの局面で中原が2三金上でなく、3一金としておけば勝ちにつながったかもしれない。悔やまれる一局だっただろう。都心の対局とあって、報道陣がむらがった。冷めてゆく熱気とともに彼らの姿も一人減り、二人少なくなって行った。ホテルのフロントにまで「名人戦どうなりました」の問い合わせが続いた。昂まる関心の中で、今シリーズ、加藤が初めて中原をリードした。

 好局の指し直し第6局。軽い打ち上げのあと、加藤は深夜、自宅に帰った。当日帰宅の多い中原は、この夜、浴衣姿になってニューオータニに泊まった。沈静しない悔恨と興奮を治めるには、自宅より、ホテルの方がよかったのかもしれない。

 加藤、初の名人位へ王手。カド番に立った中原のピンチは、これまで9年間の中で最も大きな赤信号ではないだろうか。

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加藤一二三名人誕生の少し前の頃のこと。

加藤一二三十段(当時)の勝負に懸ける気合いが十二分に表れている。

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カマンベールチーズにトマトジュースの組み合わせだと、おやつと言うよりも軽食のようなイメージだ。

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私はトマトジュースを一度も飲んだことがない。もちろん野菜ジュースも。青汁は一度だけ飲んだことがある。

私がトマトジュースを飲まないのは、生のトマトが苦手だから。

トマトは果物としか思えないような姿・色なのに、味と匂いが全く果物ではなかったことが、子供時代の私に大きな衝撃を与え、現在に至っている。

トマトケチャップは全く抵抗がなく、オムライス、ナポリタンは子供の頃から好きなので、私は子供の味覚のままなのだろう。

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ホテルニューオータニなので、バーベキューと言っても既に焼き上げたものが出てきた可能性が高い。

それがあるべき姿だと思う。

私が非アウトドア派ということも大きな理由かもしれないが、バーベキューにはどうしても興味が持てない。(バーベキューは1~2回経験してるが、その上での強固な結論)

高性能の調理装置があれば別だろうが、風が吹く野外で調理しても焼きムラができやすく、それならばプロに作ってもらったほうが美味しく安心して食べられるのではないかと思うからだ。

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お好み焼きも、自分たちで焼く店よりも、完成したお好み焼きが出てくる店の方が嬉しい。

焼肉としゃぶしゃぶは例外だ。

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世の中にバーベキュー嫌いはどれくらいいるのだろう、と思って調べてみると、バーベキューの嫌いな人が意外と多いようである。

暑い・熱い・煙い! 6割超が「バーベキュー嫌い」(NewsCafe)

しかし、別の調査によると、4人に3人はバーベキューが好きという結果も出ており、真相は闇の中だ。