将棋世界2003年5月号、関浩五段(当時)の「公式棋戦の動き」より。
1図、予想通り杉本の四間飛車に加藤が棒銀を採用した。
図の▲3七香は、近ごろ加藤が他棋戦で試みた新手法だが、杉本は軽快なフットワークで裏をかく。△4六歩▲同銀△6四角▲5七金直△3六歩▲同香△4五歩▲3七銀△5五歩▲同歩△4四銀(途中1図)……。手順中、△3六歩~△4五歩で銀をへこませた効果は絶大。先手の右翼を団子状態にした杉本は、さらに戦場を中央に移してペースを掴んだ。
2図は9手後の局面。有段の読者なら、上記の△4四銀からどのような経過をたどったか、容易に想像できるだろう。
ここから杉本が強手で決める。
△5七金▲同金△同歩成▲同飛△5五銀!(途中2図)
△5七金から先手玉を裸にし、△5五銀が会心の一着。▲同飛なら△同飛▲同角△5八飛の王手角。
また、▲5五同角なら△5六歩▲同飛とつり上げて、△6五金でも△5三香でもきれいに決まる。
途中2図以下の指し手
▲5九飛△5六香(3図)最終△5六香に▲5七歩なら、△同香成▲同飛△5六銀▲5九飛△6七銀成(!)が用意されている。
快勝で本戦入りの最終切符を手に入れた杉本は、順位戦でもB2昇級を決めた。
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加藤一二三九段の▲3七香が入った棒銀も迫力満点だが、杉本昌隆六段(当時)の振り飛車らしい軽妙な手の連続で、棒銀側の3筋は交通渋滞を起こしたような重い形となってしまう。(途中1図)
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2図からの後手の攻撃は、振り飛車党から見たら涙が出るような嬉しい手順。
3図で▲5八歩と受けても△5七歩で状況は変わらない。
3図以下は、▲3九飛△5七香成▲8六歩△6七成香▲同玉△6六銀!▲同角△5六金と進み、杉本六段絶好調。
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村山聖四段(当時)は奨励会時代の杉本昌隆三段(当時)を、振り飛車党の中で唯一の本格派と、非常に高く評価していた。
→村山聖四段(当時)「杉本三段は全振り飛車党の中で唯一の本格正統派です。メチャクチャ格調が高いんですよ」