非常にわかりやすく、なおかつ歯に衣着せぬ激辛の解説。
将棋世界1983年4月号、第32期王将戦七番勝負〔米長邦雄棋王-大山康晴王将〕第3局、「タイトル戦を斬る 激談:大内延介VS森雞二」より。
大内 この将棋、ぼくは将棋会館で大盤解説してたんだけど、なかなか指し手が当たらなくてね(笑い)弱っちゃった。
森 ぼくも仲間と研究していましたが、双方に疑問手がとびかいましたね。
大内 だから、どんなふうな話になるかわかんないけど、とにかくスタートしよう。
森 大事な将棋だと大山王将は四間飛車が多いですね。
大内 で、△7二銀(1図)の早上がり。玉頭位取りに備える、最近流行りの銀上がり。これも大山さんはよく指している。
森 ただ、穴熊にはできなくなっちゃいますけど…。森安八段もよくやってますね。
大内 岡山スタイルというところかな。
森 (▲6八銀を見て)米長さんは居飛車穴熊はほとんどやんないですか。
大内 たまーに見かけるけど、対振り飛車には左美濃が多いね、ヨネさんは。でも大山さんには、なぜか玉頭位取りが多いみたい。(△5二金左(2図)に)ちょっとおかしいんじゃない、これ。普通は△6四歩でしょう。
森 金を上がったために、後で△7二飛と回れないから▲7五歩の位が取りやすくなったということですね。
大内 金上がって7五の位を取られるんだったら、△7二銀の早上がりの意味がない。
森 銀を上がるんなら△6四歩ですか。それでも▲7五歩なら△6三銀から△7二飛。
大内 そう、そう。金の態度をなかなか決めない人だと思ったけどね、大山さんは。
森 △8四歩(3図)は、場合によっては△8三銀から△7二飛で位の奪還を目指した手。
大内 △5四銀までは必然の運びとして、ヨネさんの▲3六歩は普通は突かないよね。
森 結局、△8三銀から△7二飛の牽制ですか。ゆっくりしていると、やってきますから。形が崩れた時に▲3五歩から▲4六銀をねらって…。次の大山王将の指し手がすごい。
大内 △4五歩(4図)か。思い切った手だねえ。△8二玉と上がったら、どうなったんだろう。
森 角上がったり(▲7七角)金上がったり(▲6七金)するんじゃないですか。
大内 それなら△8三銀から△7二金で、後手陣もしっかりしてくるよ。
森 じゃあ、△8二玉に▲3五歩と仕掛けてみましょう。△同歩に▲3八飛と。
大内 それだと飛車回って(△3二飛)飛車走って(▲3五飛)銀引いて(△4三銀)振り飛車十分に戦えるな。(変化A図)
森 次に△2二角を見て振り飛車戦えますね。それなら▲3五歩△同歩▲4六銀を気にしたんですかね。
大内 △3六歩▲3八飛△4五歩▲3五銀△6五歩で、大丈夫なの?
森 ウーン、これは、振り飛車楽勝ですね。
大内 だから4図の△4五歩は相当に危険な手だと思うんだ。
森 ▲3五歩といけないわけですから、△4五歩では△8二玉の方がいいのかも。ここでの決戦は振り飛車大歓迎ですものね。
大内 居飛車側から見るとありがたい。▲6五歩からの角交換がいつでもできるから。
森 ▲6八金上(5図)で▲7七角は仕掛けるのが遅くなるからでしょうか?
大内 ▲7七角~▲8八玉~▲7八金の方が形がいいけれど、3手かかるからね。例えば▲7七角だと△1二香▲8八玉△8三銀。ここで▲6五歩は居飛車側も離れ駒があって危険きわまりない。で、▲7八金だけど後手にも△7二金と締まられて互角の戦いになる。
5図以下の指し手
△1二香▲8六歩△8三銀▲2四歩△同歩▲3五歩△同歩▲6五歩(6図)森 ▲6八金上と一手で締めておいて、敵の離れ駒を待てばいいわけだ。それで△8三銀と上がった瞬間に、ドーンと行った。
大内 △8三銀と上がらざるをえないようでは、さっきの△4五歩がどうだったか。適当な手待ちが難しいでしょう。
森 待ちっこだったら、居飛車側は▲7七角と上がればいい。形もいいですしね。
大内 これでやられちゃうとなると、△4五歩は相当大きな意味をもつ。
森 ▲3五歩の突き捨ては必要な手ですか?
大内 角交換してからの角を広く大きく使いたいということでしょう。▲3四角とか▲1六角のようにね。
6図以下の指し手
△8八角成▲同玉△3六歩▲7七桂△2五角(7図)森 △8八角成が封じ手ですが、この一手ですね。逆に▲3三角成とされると…。
大内 △6五同歩▲3三角成△同桂▲2四飛のように無条件に飛車が走れるようなら、これは完全に米長ペース。
森 ▲6五歩を△同銀と取るのは…。
大内 ▲3三角成△同桂としておいて、ここで▲6五銀と▲8七銀の二つの応手がある。
森 ▲6五銀なら△同歩▲2四飛で、後手の金が浮いていますからねえ。
大内 △4六歩▲同歩と突き捨ててから△6六銀の打ち込みか…。
森 なるほど、難しいことは難しい。
大内 この変化がうまくいかないなら▲8七銀と引くか、次の▲7七桂に期待して。
森 先程の△6五同銀の手で、△8八角成▲同玉としてから△6五銀もあるんですね。王手飛車の筋を残して。
大内 それだと▲8七銀と引いて…。
森 △3六歩▲7七桂△3三角としても、やはり振り飛車指しにくい。どっちみち後手をひくからと、▲8八同玉の形にして△3六歩。
大内 ▲7七桂と王手飛車を防いだ手に△2五角(7図)。なんともすごい手だね。
森 いかにも大山王将らしい手ですね。
大内 亡くなった山田道美九段とこういう将棋があったねえ。普通こんな角打つと負けちゃうもんだけどね。
森 読み筋なんですね。△2五角以外だと、飛車の走りをちょっと防げない。例えば△2二飛だと▲6四歩△同金▲3一角。
大内 しかし、居飛車側としてはこういう角を打ってもらうと…。
森 楽ですね。歩も成れないし(△3七歩成)
大内 ここじゃ居飛車良しといってもいいんじゃないの。
7図以下の指し手
▲6四歩△同金▲3五角(8図)森 ▲6四歩△同金に▲3五角。いい手ですね。角成り(▲5三角成)と角出(▲2四角)をみて…。
大内 筋違い角と筋の角だから値打ちが違う。ここじゃ、もう米長ペースと思ってました。
8図以下の指し手
△5二飛▲6五歩△6三金▲2四角△1四角▲1五角△2五歩▲6六銀△2二飛(9図)森 △5二飛で△4三飛は…。あっ飛車切って角打ち(▲3四角)でダメか。
大内 ▲1五角に△2五歩だもんね。つらいよ、これは。
森 △2二歩だと▲2四飛と浮かれ、次の▲3四飛からの飛車成が防ぎにくい。
大内 そこでジッと▲6六銀。米長ペースだ。
森 △2二飛(9図)で△3七歩成は▲同桂なら△3六歩でいいんですが、▲同角と取られていけませんね。
(中略)
9図以下の指し手
▲3四歩△3二飛▲3三歩成△同桂▲3八飛△2六歩▲2八飛(10図)森 △3二飛に▲3三歩成△同桂として、ここからの飛車の使い方がおもしろい。▲3八飛と回って△2六歩と突かせ、また▲2八飛と戻るのが…。
大内 いい感じだね。
10図以下の指し手
△2五桂▲2六飛△4六歩(11図)大内 △2五桂(10図)で△3七歩成は▲同桂で、△3六歩なら▲3四歩でこの取り合いは先手良し。△3六歩で△2五桂と跳ねても、▲3三歩△3七桂成▲2六飛△2五歩▲3二歩成△2六歩の時…。
森 あっ▲5五歩(変化C図)がひどいじゃないですか。それで踏み切れなかった。
大内 ▲2六飛に△3七歩成も…。
森 ▲3三歩と一発たたかれて、飛車がどこに逃げても▲3七桂でやはり先手良し。
大内 そこで△4六歩(11図)か。手筋だね。
11図以下の指し手
▲5五歩△4五銀▲4六歩△同銀▲2四角(12図)森 ▲4六同歩なら歩が成るって意味ですか。
大内 そう。▲3三歩と同じようにたたいても△6二飛と逃げておいて、今度は角筋が通って突き捨てが大きな利かしになる。
森 ▲5五歩は、こう突きたいところですね。
大内 引くわけにもいかないから△4五銀。これからうまく銀を取っちゃうんだね。▲4六歩△同銀に▲2四角(12図)。これがいい手だった。
森 うまい手でした。先に▲3三歩は△4二飛と回られてダメなんですけどね。
12図以下の指し手
△3五銀▲3三歩△4二飛▲3五角△4九飛成(13図)大内 △3五銀は苦しいけどしょうがないのかなあ。
森 銀の行くところがないですもんね。まさか△4五歩とは打てないし…。
大内 ▲4四歩△3四飛▲4二角成で…。
森 ダメだ。歩が重たくなっていますね。
大内 ここじゃヨネさんが楽勝するかと思っていたんだけど。
森 △3五銀は勝負手ですが、▲3三歩と打たれて。
大内 飛車の取り合いは振り飛車が悪いから△4二飛と回ったわけだ。しかし▲3五角で銀の丸損。それも単なる銀損じゃないもんね。玉頭の厚みがすごいから。
13図以下の指し手
▲6四歩△6二金引▲5四歩△同歩▲3二歩成(14図)大内 ▲6四歩から手筋の攻め。決まったかと思ったけど▲3二歩成。これは緩手だ。
森 疑問ですね。ここでは▲3六飛と歩を払って、次に▲4六飛とぶつけちゃう。
大内 そう。▲3六飛だと△4五竜しかないと思うけど、いったん▲3九飛と引いて△3八歩と打った時に▲6二角成と切っちゃう。
森 △6二同金の一手に…。
大内 ▲8九飛(変化D図)と回って、金銀持っているから8筋を攻めれば楽勝と解説したんだけれど、入ってきた手は▲3二歩成。ビックリしたよ。ヨネさんらしくない手だ。
森 実戦心理としては▲3六飛はこわい手ですね。この歩を取ると△3七桂成で角が働いてくるし、竜を引かれて▲3九飛に△3八歩と打たれるとね。角切って▲8九飛で優勢には違いないんですけど、それをやると相手にも手を作らせると思ったんじゃないですか。
14図以下の指し手
△9五歩▲同歩△9七歩▲同香△9八歩▲6三歩成△同金▲6九歩△9九歩成(15図)大内 △9五歩。ウーン、こんなところで手ができるものなのかねえ。△9八歩を▲同玉と取ると、△3七歩成がイヤだったのかな。
森 それと△9六歩▲同香△9七歩の筋が、いつでも振り飛車の権利ですからね。
大内 たしかに気持ち悪い。▲6三歩成から▲6九歩は実戦ならこうやるね。
15図以下の指し手
▲1六歩△3七歩成▲4六飛△同竜▲同角△9八飛(16図)森 ここで米長さんは▲1六歩と指したんですけど、これは全然信じられないですね。
大内 なんだかわかんないね、どういう意味だったんだろう。△3七歩成に▲1五歩で勝てると思ったのかな。でも△3六とで…。
森 なるほど、負けですね。△3六と▲同飛△3七桂成▲同飛△6九角成(変化E図)とパーッと殺到されてね。だから▲1六歩は本当の一手休み。パスに等しい。
大内 気が狂った感じね。
森 △9九とは取ってられないですか。
大内 取りたいけど△3七歩成で…。
森 やっぱり角が働いてきますか。でも▲4六飛とぶつける手がある。
大内 歩打って(△9六歩)▲同香に飛車打ち(△9七飛)のねらいが残る。すぐは▲9八飛受けがあるけどね。
森 ちょっと取りにくいですね。ここでは。
大内 翌日の新聞でも”驚いた”とは書かれていたけど、どうやればいいのか書かれていない。
森 はっきり結論が出ていないんですか。
大内 すると銀損した大山流の指し方は、決して悪くなかったということなの。
森 だからその前の▲3二歩成がおかしかったんですよ。▲3六飛で決まっていれば、やっぱり銀損は悪いわけです。
大内 (15図から)▲6五桂はどう、王様を広くして。
森 歩成るか(△3七歩成)歩受けるか(△4四歩)だけど、受けるのが好きな人だから(笑い)△4四歩と受けておいて、次に△6四歩の桂取りと見せて…。
大内 やっぱり▲9九同玉と取って切らせるしかないのか、▲6九歩と打ったんだから。…で、発狂の一手をやったわけだ。
森 △3七歩成とされてガク然したんじゃないですか。予定だったら▲4六飛に30分も考えないですものね。
大内 予定変更でしょう。夕食休憩(▲4六同角)ではおかしい、というヨネさんの感想がある。
森 そうでしょう。9九にと金がいて飛車を渡そうっていうんですからね。でも飛車交換してからの△9八飛(16図)が、またおかしい。普通は△4七とでしょう。
大内 △4七と▲3五角△5八と(変化F図)と指し、▲同金なら△9八飛で後手有利。あるいは△4七と▲3五角に△8九飛と打ち、▲7八玉に△9八ととされても困るんだ。
森 (△8九飛▲7八玉△9八と、に)▲5六金と上がる一手。
大内 そこで△3七桂成と成っておいて、次の△5八とが強烈。
森 なるほど▲4二飛でも△6二歩が立つし、▲4一飛は…△5八とが詰めろですか。
大内 ねえ、これでも勝ちなんだよ。
森 なぜ△4七とと指さなかったのか、今でもわからない。
大内 この将棋は謎だらけ。(笑い)
森 △4七とから△5八とと指せば、これは勝ちますね。
大内 大山王将だから△9八飛と打ったとも言える。この局面をアマチュアの人に”次の一手”の問題として出したら、ほとんどの人が△4七ととするんじゃないかな。
森 考えすぎて、寄せにいっちゃったんですね。それが寄らなかった。
大内 △9八飛が決め手と思ったんでしょう、きっと。夕飯をはさんで。
16図以下の指し手
▲8七玉△3六と▲2四角△9六歩▲同香△9四歩(17図)森 △3六ともわからない。考えられるのは▲3五角と出られるのがイヤなだけ。
大内 次の飛打ち(▲4一飛)がイヤだったのかな。でもと金は4七の方がいいね。
森 ただ△4七と▲3五角に△5八ととやると、今度は▲7八金と寄られてダメですね。
大内 △4七とと指せば△8九飛の筋からきてるんだよね。△9八飛だから△3六とという感じになっている。つまり△9六歩▲同香△9四歩という手順に期待していて、△3六とで▲2四角と角をボカしておけば優勢だと思ったんじゃないの。
森 なんだかこの順は、▲3二歩成から▲1六歩の手順に似ているんじゃないですか。
大内 似てる。これで帳消しだ。
17図以下の指し手
▲7八金△9五歩▲8八金△9六歩▲9八金△同と▲7八玉△9七歩成▲5七金△2三角▲5六歩△6四香▲4二飛△6二歩(18図)森 ▲7八金!これがいい手だった。▲9四同歩は△9五歩▲同香△同飛成でダメですからね。
大内 まさに絶妙手。大山王将の△9五歩から△9六歩は、自玉を安全にしながら攻めていこうという欲張った指し方。あわよくば入玉もといった考え方で、むこうも入玉するんなら負けはない、とみてたんだ。しかし、▲7八金からのズリ寄りの金が米長流の絶妙手。これからのヨネさんの凌ぎがすごい。
森 △9六飛成とできないのがつらい。
大内 ▲7八玉△9八と▲8七金でやっぱり竜が殺されるからね。
森 △8七同竜▲同銀で、と金が4七にいたら負けないのにねえ。(笑い)
大内 ▲5七金がいい味だから、大山王将がこれを勝ち切るのは大変だと思ったね。
18図以下の指し手
▲8五歩△8七と▲同銀△8八金▲6七玉△8七金▲4一飛成△6六香▲同金△7八銀▲5八玉△4六歩▲8四歩△同銀▲8三歩△9三玉▲9五歩△9四歩▲8二歩成(図)
まで、139手で米長棋王の勝ち大内 ▲8五歩が米長流の決め手。
森 なんともきつーい一手ですね。
大内 うまい手だなあと思った。横から攻めるのはダメなんだ。例えば▲4一飛成と成って、▲6一竜と金を取ってもこれが詰めろになっていない。
森 横からだと受けがいっぱいありますからね。
大内 ここで△8七ととやったんでハッキリした。わかりやすくなった。
森 楽になりましたね。△8五同歩と取ってまだむずかしいんじゃないですか。
大内 そう。▲8四歩△同銀▲8五銀とぶつけても、△同銀▲同桂の時がなんでもないからね。
森 △8七とを指すにしても、△同歩と取ってからの方がまだアヤがありましたね。
大内 △8七とで△6六香と銀を取っちゃダメかな。▲同金に△4六歩と垂らして…。
森 詰めろですか?
大内 じゃないけど、なんかむこうに駒が渡せないっていうか。
森 それだと▲8四歩△同銀▲8三歩。まあ仮に△同玉と取ったとして▲8五歩(変化G図)が詰めろですね。
大内 △8八と寄と王手をして、▲6七玉と上がる一手。
森 ▲6八玉と寄ると?
大内 △5七銀▲6七玉△6六銀成▲同玉に△5五金(変化H図)と打って詰み。
森 ほうーっ。なるほど。だから▲6七玉。
大内 で△7八銀に▲6八玉。これで振り飛車側が詰めろになっているかどうか、だけど。
森 ▲8四歩△9四玉▲9六香△同と▲8三銀で詰み。でも相当に難しい変化ですね。
大内 でしょう。必ずしもこうなるとは限らないけど、△8七とよりははるかに難解。
森 △8七とでわかりやすくなりましたね。
大内 △7八銀から同じような攻め方をしているけど、ハッキリ一手足りなくなった。
(中略)
森 最後は手筋の連発で鮮やかでした。
大内 最初はヨネさんが銀得になって楽勝かなと思ったけど、▲1六歩の緩手をついた大山王将の攻めがすばらしく逆転した。しかし△9八飛と寄せにいったのが失敗で、ヨネさんのズリ寄りの金が実現した。
森 △4七とですね。あそこは。それで終わりだとみんなで言ってたんですけどね。
大内 悪い方は”どうせ負けだから”と大胆に勝負手を連発する。優勢な方は”大事にいこう”ということに必ずなる。実戦心理とはそういうもので、勝ちを意識したとたんに▲1六歩や△9八飛の悪手が出る。”タイトル戦に名局なし”というけど、三つともひどいね。お互いにソウ状態になっている感じ。
森 タイトル戦だと不思議と自分本来の実力が出なくなりますね。(笑い)
大内 ムードに負けるんだよね。(笑い)
森 しかし、これから一波乱も二波乱もありそうな感じがします。
大内 大山VS米長という屈指の好カードだもんね、これからがますます楽しみだ。
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大内延介八段(当時)と森雞二八段(当時)という、振り飛車党の二人による豪快でわかりやすい解説。
このような高段者同士が遠慮なく話してくれると、難しい変化も追ってみようという気持ちになる。
というか、このような長編を書こうと思わせるほど、魅力的な内容だ。
森雞二八段が読者のために、上手な聞き手になっているとともに、煽り役にもなっている。
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大内八段の「▲8九飛(変化D図)と回って、金銀持っているから8筋を攻めれば楽勝と解説したんだけれど、入ってきた手は▲3二歩成。ビックリしたよ。ヨネさんらしくない手だ」
ヨネさんらしくない手だと言われても、▲8九飛は大内八段にしか指せないような、他の棋士はあまり指さないような大内流の手にも思える。
このような勢いがあるところも面白い。