控え室の山崎隆之七段(当時)

今週月曜日の記事「観戦記者の深刻な悩み」で、

(NHK杯戦の)対局前の控え室で、何もしゃべっていない時でも動作に動きがあって面白いのが、三浦弘行九段と行方尚史八段と山崎隆之八段。

と書いたが、これだけでは説明不足となってしまうので、事例をもとに書いてみたい。

まずは、山崎隆之八段編から。

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私がNHK杯戦で佐藤天彦七段-山崎隆之七段戦の観戦記を担当したのが2013年の春。解説は稲葉陽六段。(段位は当時)

対局前の控え室では、山崎七段と稲葉六段が番組プロデューサーなどと雑談をしていた。

1回戦や2回戦では、関西の棋士が登場する時には解説者も関西の棋士であることが多く、控え室での会話が弾む。

佐藤天彦七段は会話には参加をしなかったが、話を聞きながらニコニコしていた。

それから少し時間が経つと、佐藤七段が精神集中モードに入り、うつむき加減に瞑想を始めた。何か困ったことでもあったのだろうかと思うくらいの前傾姿勢が佐藤七段の瞑想の特徴。

雑談は続いていたが、間もなく山崎七段は立ち上がり、鞄からメガネを取り出し、メガネをかけかえた。

対局用のメガネだ。

対局用のメガネをかけた瞬間から山崎七段は真剣な表情になり、控え室のあちこちを初めて来た場所のようにキョロキョロと見始めた。

まるで、瞬間移動装置で突然この場所に連れてこられ、「ここはどこなんだろう」というような表情。

そして、じっと瞑想している佐藤七段を視界にとらえた山崎七段は、初めて会った人を見つめるような不思議そうな表情で、数秒間、凝視していた。

対局用のメガネをかけたことによって戦闘モードのエネルギーをどんどん充電しているような山崎七段の様子。

非常に華がある表情と動きだった。

控え室は、それから数分後のプロデューサーの「時間になりましたので、スタジオへ移動しましょう」の言葉が出るまで無言の時間が続いた。

対局開始時間が近づくにつれて控え室が急に無言になる、この無数の針でチクチク刺されるような緊張感も、個人的にはたまらなく好きだ。

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山崎八段がNHK杯戦の控え室でいつもこのようなパターンであるとは限らないだろうが、対局用のメガネにかけかえてからの変化がとても印象深いものだった。

この、山崎七段と佐藤七段の対局前の控え室での模様は、観戦記には書かれていない。

その後の話の展開と結びつけるのが難しかったのと、行数の関係から、盛り込むことができなかった。

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10月15日に、関ヶ原古戦場で「『天下分け目の関ケ原』東西人間将棋」が行われる。

「『天下分け目の関ケ原』東西人間将棋」出場棋士決定!(岐阜県)

東軍が佐藤天彦名人(徳川家康)で西軍が山崎隆之八段(石田三成)。

出身地から見ると、佐藤名人が徳川家康兼黒田長政、山崎八段が石田三成兼毛利輝元とも言えるだろう。

面白そうな企画だ。