将棋世界2004年8月号、山本真也四段(当時)の「関西将棋レポート」より。
この日は名人戦第5局が指されていて控え室も活気がある。二転三転の内容で手に汗握る大熱戦だったが、何故か羽生名人を応援する棋士が多かった。杉本六段だったか、「羽生さんが応援されるってのは珍しいね」と言った。たしかに七冠の頃はまさに憎らしいまでの強さで、応援されるなどとは考えにくかったが、時代が変わりつつあるのだろうか。
(以下略)
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昨日の記事、dcsyhi氏の将棋倶楽部24での最終対局日(2004年6月5日)の前日の話。
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前年度から、竜王、王将を、立て続けに失冠している羽生善治名人・王座。
この名人戦第5局も、1勝3敗のカド番で迎えている。
挑戦者は、羽生名人から竜王と王将を奪った森内俊之竜王・王将。
中期的に羽生名人不調と捉えられていた時期で、そのような状況下での、関西将棋会館棋士室の模様。
杉本昌隆六段(当時)が「羽生さんが応援されるってのは珍しいね」と言ったということは、カド番にはなっていなかった第4局まではそこまでの明確な雰囲気ではなかったと考えられる。
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この第5局は羽生名人が勝ったが、第6局で敗れて名人位を失冠。
羽生王座は12年ぶりの一冠、七冠獲得以降は初めての一冠となってしまう。
しかし、一冠だったのは3ヵ月間だけで、谷川浩司王位から王位を奪還、更に同じ年度内に王将、棋王も奪取し、四冠となる。
「時代が変わりつつあるのだろうか」というわけでは決してなかった。
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今秋、羽生竜王が一冠になったのはこの時以来で13年ぶり。
一冠だった期間は2ヵ月。
2004年の時も今回も、一冠から脱却する早さが凄い。
今回の羽生竜王の竜王戦での斬新かつ積極果敢な指し回しを見ると、今夏の王位、王座の失冠も、現代の最先端の将棋を取り入れるためのフォーム改造中の時期と重なっていたとも思えてくる。
やはり「時代が変わりつつあるのだろうか」というわけでは決してなかった。