ツノ銀中飛車の攻めをとがめるプロの技

将棋世界1998年7月号付録「全棋士出題次の一手 PART2 子供の頃の得意戦法」より、平藤真吾五段(当時)。

●ヒント●

少年時代の得意戦法はツノ銀中飛車。問題図は当時の必勝パターンの一つです。

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●解答● 

▲5六銀(解答図)

 ▲5六銀と歩の頭に銀を進めるのが狙いの一手。これを△同歩なら▲2二角成△同玉▲5五角の王手飛車が決まります。また△6三金の受けには▲5五銀△5四歩▲6四歩と攻めが続きます。

 あれからウン十年、この局面が目の前に現れたのは南九段宅での10秒将棋の勝ち抜き戦。しめた!とばかりに銀を出たのですが、南九段の応手は意表の手順でした。△8六歩▲同歩△6六歩▲5五儀(▲同角は△6二飛で王手飛車の筋が消える)△8八歩▲同角△8六飛で困ってしまいました。さすがプロは一味違うなあ。

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この▲5六銀、実は私も、実戦で試したことはなかったものの、中学3年の時に発見していた。

それから幾年月、この将棋世界1998年7月号付録の平藤真吾五段(当時)の項を読んで、「ああ、やっぱりプロはさすがだ。このような手を許してくれない」と感嘆したものだった。

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2013年8月、副鼻腔炎・鼻中隔弯曲症の手術で東京逓信病院に入院した。

手術は全身麻酔。

麻酔科医は目の綺麗な女性の先生。

手術室で「お酒は飲まれますか?」と聞かれたので、

「はい、嫌いではないです」と答えると、

「じゃあ良かった。全身麻酔はお酒を飲んだ時のような気分になりますから」と麻酔科の先生。

たしかに、すぐに、水割りを飲んで気分良く酔っ払ったような感じになってきた。麻酔科の先生、目が綺麗だな…と思った瞬間に意識は無くなった。

目が覚めると手術は終わっていた。

驚くほど、痛みが全く感じられない。

「手術は4時間かかりましたが、炎症の起こった部分は全て取り除きました」と執刀医の福士蒼汰似の先生。

私は思わず、「さすがプロの技ですね。痛みが全く残っていません。いやー、凄いプロの技です」と鼻の穴に大量の脱脂綿が詰められた状態のまま口走っていた。

看護師さん達は笑っていたが、手術直後の偽らざる心境を言葉にしたものだった。

あまりに痛みが残っていないので、もしかすると手遅れ状態になっていて、何も切らずに手術を終えてしまったのではないか、と少し不安になってしまうほどだった。

実際には、その晩、微熱は出たし、鼻経由の血が口に流れてきたりで、4時間の手術が行われたことを実感できた。それでも、ほとんど苦しくなく、想像していたよりもものすごく楽だった。

それはさておき、「さすがプロの技ですね」や「凄いプロの技です」と第一声で出たのは、多分に将棋の影響があったからと思われる。

医師はプロ以外は存在しないわけで、今になって考えると、かなり間抜けな感想を述べていたような感じがしてならない。