時代を先取りしすぎたタイトル戦

将棋マガジン1984年3月号、山帰来さんの第22期十段戦七番勝負第6局観戦記「中原十段、1000局目を大きな白星」より。

 このシリーズで私は第2局と本局を観戦させてもらった。

 これまで観たタイトル戦とひと味違ったのは、盤外の駆け引きが殆どないように思ったことと、両対局者ともファイトを面に表さない点である。

 過去のタイトル戦では盤外の駆け引きやファイトを両者に、またいずれかに感じた。悪いということではなく、それはそれなりに面白いのだが―。

 しかし、谷川名人ら若手棋士の冷静な対局態度を想うと、中原-桐山戦が将来のタイトル戦の典型になるのではないか、という気がしてならない。

 普通、二日制のタイトル戦では、二日目の昼と夜の食事は自室でとることが多いが、私の知る限り本局の二人は総てにこやかに会食で通した。これも新時代の幕開けのように思えた。

(以下略)

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「山帰来」は元・将棋世界編集長の太期喬也さんのペンネーム。

竜王戦の前身である十段戦は、持ち時間が9時間。二日目は夕食休憩もあった。

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以前も書いたが、中原誠十六世名人と桐山清澄九段は年齢が同じで四段になったのも半年違い。

二人とも非常に温厚な紳士であるという共通点もあり、気が合う部分もあったのだろう。

二日目の昼食をレストランの同じテーブルで(もちろん関係者も一緒だが)とることもあったようで、その際には二人が談笑する場面もあったという。

中原誠十六世名人が勝ちを確信した時にトイレへ行く理由

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「谷川名人ら若手棋士の冷静な対局態度を想うと、中原-桐山戦が将来のタイトル戦の典型になるのではないか、という気がしてならない」

たしかに、盤外の駆け引きやファイトを前面に押し出したタイトル戦は、その後急速に減っていく。

そういう意味では太期喬也さんの予言は当たっている。

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「普通、二日制のタイトル戦では、二日目の昼と夜の食事は自室でとることが多いが、私の知る限り本局の二人は総てにこやかに会食で通した。これも新時代の幕開けのように思えた」

しかし、さすがに両対局者が対局中の昼食で談笑するようなことは現在でも全く一般的なことではなく、この部分だけは時代を先取りしすぎていたことになるだろう。

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時代を先取りしすぎた、と書いたが、このような光景が近い未来のタイトル戦で現れるとも思えず、あったとしても200年後、300年後の世界かもしれない。

 

 

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