NHK将棋講座2018年5月号「豊島将之八段-稲葉陽八段戦」観戦記

今日は、NHK将棋講座2018年5月号の発売日。

◯表紙は山崎隆之NHK杯と稲葉陽八段のイラスト。

○佐藤紳哉七段の講座「佐藤紳哉のエンジョイ将棋」、5月のテーマは「敵陣を破る・駒を取る」。初級者が初段になるために有用な手筋が次々と解説されている。「シンヤのひとりごと」「シンヤ流ステップアップGUIDE」「今週のまとめ」などコラムも嬉しい。

○「第67回NHK杯テレビ将棋トーナメント優勝者 山崎隆之八段インタビュー」。インタビューは小島渉さん。山崎八段ファン必見。ちなみに、この頁に載っている写真を見ると、棋譜読み上げに新たに加わった女流棋士が誰か知ることができます。

◯後藤元気さんの「渋谷系日誌」は、ラーメン店での話、読者からのお便り、決勝戦に進んだ山崎隆之八段と稲葉陽八段それぞれの「決勝までに印象に残った場面」。後藤さんの決勝戦の観戦記は対局が終わって締切はすぐ、という過酷なスケジュールで書かれたもの。

○「第67回NHK杯テレビ将棋トーナメント出場女流棋士決定戦 一手一手に力と心を込めて」は宮本橘さんによる加藤桃子女王-伊藤沙恵女流二段戦の観戦記。

○段・級位認定 次の一手問題

○将棋連盟からのお知らせ

○女流棋士会からのお知らせ

○日本女子プロ将棋協会からのお知らせ

○「重箱のスミ」クイズ

○テキスト感想戦

○付録は、「第67回NHK杯戦 激闘の記録(3回戦から決勝戦まで)」。戦いの中で現れた妙手を次の一手形式で味わうことができる。

〔NHK杯戦観戦記〕

◯準決勝第1局 豊島将之八段-稲葉陽八段

「新しい次代の息吹」 観戦記:私

◯準決勝第2局 山崎隆之八段-郷田真隆九段

「山崎は活躍が足りない」 観戦記:上地隆蔵さん

◯決勝戦 稲葉陽八段-山崎隆之八段

「勝負の不思議」 観戦記:後藤元気さん


今月号には私が書いた観戦記(豊島将之八段-稲葉陽八段戦)が掲載されています。

豊島八段の模様が良かったように見えた将棋でしたが、気がついたら稲葉八段が優勢に。

対局前の控え室の様子、感想戦の模様、後日の両対局者の談話、後日の両対局者による詳細な指し手の検討、そして解説の斎藤慎太郎七段を交えた対局後の控え室でのこと、などを盛り込んでいます。

NHK将棋講座2018年5月号、ぜひご覧ください。

NHK 将棋講座 2018年 5月号 [雑誌] (NHKテキスト)

 

 

桐山清澄九段の燻し銀の芸

将棋マガジン1985年6月号、川口篤さん(河口俊彦六段・当時)の「対局日誌」より。

 棋王戦の記事でありながら、桐山のことにふれなかったのは、どう考えても片手落ちだった。で、桐山のことを書こう。

 と。言ったものの、桐山を語るのはなかなか難しい。そうでなかったらとっくに書いていた。

 それはともかく、桐山ほどエピソードの少ない男も珍しい。私とは三段の予備クラスで戦った仲で、知り合ってからずい分長いが、その間おもしろい話を聞いたことがない。

 対局中は無口でポーカーフェイスを押し通すし、酒を飲んだり、遊びに行ったり(ごく稀にだが)しても、隅でニコニコと笑っているだけである。書くことがないのが特徴、というくらいのものだ。

 そんなわけで、残る手は桐山将棋を語るしかないのだが、これがまたやっかいである。とりあえず8図を見ていただこう。

 8図で先手の桐山はどう指したか?考えていただいても当たりっこないから答を言うと、▲9八香と上がったのである。

 卓越した序盤の構想、華麗なさばき、魔術師的なテクニック、そんなものは桐山の特質でなく、本領は、この▲9八香といった類の手にある。

 これなどは桐山でなければ絶対に指せない手である。妙手でもなければ悪手でもない、さりとて緩手でもない。善悪を超えた意味不明の手である。しかしプロはこれを見て、ただただ感心するのである。

 もう一つ例をあげよう。

 9図は、記憶に新しい棋王戦第2局の中盤。

 △5七歩成と成られたこの局面で、みなさんが先手側を持てば、ノータイムで▲5二歩△同飛▲5三歩、と連打の歩で飛車先を止めるだろう。後どうなるかはその時のこととして、とにかく▲5二歩と打つはずだ。

 それを桐山は▲5三歩と控えて打つのである。

 繰り返すが、▲5二歩△同飛▲5三歩△5八と▲同金△6二飛まで一段落して先手の手番。ところが単に▲5三歩は後手の手番である。つまり一手ちがう。歩の数、飛車の位置などのちがいはあっても、一手の差は大きいはずだ。桐山はそんなものを無視するのである。おそらく「終盤は駒の損得より速度」なんていうのは、単なる景気づけぐらいに思っているのだろう。

 同じ例はまだまだたくさんある。桐山は、桐山でなければ指せない手を指すことによって、プロ中のプロなのである。しかし、なんと判りにくい芸であることか。

(以下略)

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桐山清澄棋王(当時)はこの年の3月に米長邦雄四冠(当時)に勝って棋王位を奪取している。

更にはこの翌年に棋聖位を獲得(3期・1年半保持)することになる。

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桐山清澄九段の棋風を形容するとき「燻し銀」という言葉が使われるが、なるほど、▲9八香や▲5三歩はまさに燻し銀のイメージにピッタリだ。

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「燻し銀のような」は、「見た目の華やかさはないが実力や魅力がある」「渋くて味わいのある」と同義語。

刑事ドラマには最低一人は必要なキャラクターだ。

『太陽にほえろ!』でいえば露口茂さんが演じた山村精一(山さん)。

例外は『西部警察』で、毎回のように銃撃戦やカーチェイス、爆破シーンが盛り込まれていた関係からか、燻し銀の雰囲気の刑事は誰もいなくて、とにかく鉄砲を撃ちまくる。またそれが西部警察の特徴でもあった。