花村元司九段「いやぁ~電車が混んじゃってネ~」

将棋マガジン1987年2月号、コラム「棋士達の話」より。

  • 対局の遅刻はその時間の3倍を引く罰則がある。ほめられた事ではないがよく遅れる常連もいる。独特の人柄で知られた故・花村元司九段はある時遅刻のいいわけに、「イヤァ~電車が混んじゃってネ~」と言った。ン?関係あるのかな。

  • 現在は持時間も6時間が最長だが、以前は7時間や8時間もあった。双方一杯に使うと夜が明ける事が多かったという。これは深夜に解放されてもタクシー代も宿泊代もないため朝までかかる方がよいという理由だった。これは本当の話。

  • 対局も深夜におよぶと棋士に変化があらわれる。疲労からかヤセ型の米長邦雄十段はホオがこけて来る。対してふっくらした中原誠名人は逆にむくんで来る。その対比に凄絶さが増幅されるわけだ。この模様を読者にも正しく伝えたいものだ。

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花村元司九段は、対局の日の朝はいつも、日暮里の自宅からタクシーで千駄ヶ谷の将棋会館まで行っていた。

電車の中では大好きなタバコを吸うことができないのが大きな理由。

そういうわけなので、「イヤァ~電車が混んじゃってネ~」は「イヤァ~道が混んじゃってネ~」を言い間違えたという可能性が最も高い。

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持時間が8時間なら、午前10時から始まって昼休と夕休が1時間ずつとして両対局者がフルに時間を使えば、どんなに早くても終わるのが午前4時。感想戦をすればすぐに始発電車が動き始めるという具合。

体力はかなり消耗しそうだ。