「鳴りもの入り達」と紹介された奨励会員たち

将棋世界1989年3月号、駒野茂さんの「関東奨励会レポート」より。

鳴りもの入り達の紹介

 アマ棋界で輝かしい棋歴を持ち、そして奨励会に入ってくる若者が増えてきた。そこで、彼らのことを紹介したい。

小川浩一初段(1981年中学生名人・中学生選抜戦優勝、21歳)

 これ程素晴らしい棋歴の持ち主はいない。それに、将棋祭りでは無敵を誇っていた程だ。現状はどうか。どうも低迷気味である。生活パターンを変えて、復調してもらいたいものだ。入会当初、手には棒銀アラカルトの本を持ち、襟を正していた姿がなつかしい。

勝又清和初段(1983年中学生名人、19歳)

 初段までは順調であったが、ここでピタリと止まってしまった。早指しで、奇麗な将棋であるが、上に行くためには、ここで一工夫が必要と思う。

川上猛2級(1986年中学生名人、16歳)

 とにかく口数が少なく、おとなしい若者である。それが災いしてか、伸び悩んでいた。しかし、最近では盤上に荒々しさをみせ、闘志満々である。伸びが期待される。

立脇敬一5級(1987年中学生名人、15歳)

 昨年入会したばかりで、分からないことが多い。しかし、新入会の中では抜けている存在だ。

瀬川晶司1級(1984年中学選抜戦優勝、18歳)

 もの静かな男だ。成績も牛歩のあゆみという感じ。大崩れもなく、大勝ちもしないタイプであるが、このところ好調だ。ガンバッてほしい。

鹿島寛4級(1985年中学選抜戦優勝、17歳)

 爆発的な瞬発力が必要。年齢的なこともあるので、ここらで一つ奮起してほしい。

斎田純一初段(1983年小学生名人、17歳)

 とにかくいつも連盟にいる。不思議に思う程。これだけ真面目?に将棋に接することは、いいことだ。今後もこの姿勢が良いと思う。

窪田義行初段(1984年小学生名人、16歳)

 考え方に独特なものがあり、それが彼の個性でもある。一時ファミコンに凝り、その影響もあってか2番連続降段の一番を迎えてしまったが、気を取り直して何とかそれをこらえた。遊びも程々に。

将棋マガジン1984年6月号グラビア。撮影は弦巻勝さん。

野月浩貴3級(1985年小学生名人、15歳)

 一時期5級→6級へ逆噴射してしまったこともあったが、最近はまあまあである。ここらで止まっている男ではないと思うが。

将棋マガジン1985年6月号グラビアより。撮影は中野英伴さん。

鈴木大介初段(1986年小学生名人、14歳)

 好青年である。そして、大器でもある。これからの注目株だ。

将棋マガジン1986年6月号グラビアより。

田村康介4級(1987年小学生名人、12歳)

 落ち着きのない少年だ。その影響もあって、勢いはいいが、見落としも多い。落ち着くことが、好成績につながるであろう。

将棋世界1987年6月号グラビアより。撮影は中野英伴さん。

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中学生名人、中学選抜戦優勝者は記事が載っていないことが多く、写真を見つけることができたのは小学生名人だけだったが、このように写真が並ぶと、とても感慨深い気持ちになってくる。

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例えば丸山忠久三段(当時)は1984年の中学生名人だが、ここで紹介はされていないので、初段以下の奨励会員を紹介の対象としたのだろう。

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鈴木大介初段(当時)の「好青年である。そして、大器でもある」という評が、現在の鈴木大介九段そのままという感じがする。

窪田義行初段(当時)と田村康介4級(当時)の評は、思わず笑みがこぼれてしまいそうになる。