将棋世界1989年6月号、青島たつひこ(鈴木宏彦)さんの「駒ゴマスクランブル」より。
3月末、すべての順位戦の幕が閉じると「一年が終わったな」という気分になる。笑った棋士も泣いた棋士も、5月に新しい順位戦の組み合わせが決まるまでは一応ホッと一息つける時期である。
中村修七段はスキーに出かけ、室岡五段と佐藤康光五段はヨーロッパに出かけ、羽生五段、森下五段、阿部四段、森内四段、先崎四段らは四国旅行に出かけた。
(中略)
羽生、森内らを中心とするこの仲良しグループは、毎年春休みを利用してあっちこっちを旅行している。飲んで歌ってトランプ、麻雀というのが彼らの旅行の主な行動パターンらしい。
「去年は中川君(大輔四段)も来ましてね、彼は旅行中でも一日中将棋を指そうとするからすごい。今回、僕は四国のお寺巡り、他の人はトランプが中心だったみたいですね」と、森下五段。
谷川、中村、塚田らもそうだが、最近の若手棋士は非常に仲がいいしグループ行動もとる、将棋の勉強も一緒にする。30代以上の棋士の世代では、こういうことはあまり考えられなかったこと。昔の棋士は将棋の研究はほとんど一人でしたはずだが、今の若手はお互いに引っぱり合って強くなろうとしているようだ。こうしたエリート達のグループ行動は他の世代の棋士から見れば脅威であるに違いない。
(以下略)
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男だけの旅行は、結局のところ、酒、麻雀などのインドア的な、旅行に行かなくてもでできることで時間を費やす傾向が強い。
とはいえ、旅行という非日常の空間で過ごすこと自体が、思い出ができたりリフレッシュできたりすることになる。
思い出はいくつもあった方が良い。
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この四国旅行の詳細は、鈴木宏彦さんがほぼ同じ頃、近代将棋の観戦記で書いている。