羽生善治竜王(当時)「……難しい質問ですね」

将棋世界1990年3月号、「羽生新竜王に聞く」より。

 久々に棋界全体が熱いまなざしで注目した第2期竜王戦。決着は暮れも押し詰まった12月27日、八番勝負・4勝3敗1持将棋という結果で羽生新竜王誕生を見た。

 年が明けて約1ヵ月、対局・催事等多忙の羽生竜王に、心境をインタビューした。

―あの熱気に包まれた第8局からそろそろ1ヵ月たちますが、やはり心境とか生活とか、だいぶ変わりましたか。

羽生 あっという間に過ぎたという感じですね。取材とかいろいろあって普段以上に忙しかったんですが、充実していました。

―振り返ってあの第8局、島竜王が投了された瞬間、一番最初に思われたことは。

羽生 新聞の談話でも話したんですが、「大変なことになったなぁ」というのが実感で、これから先の(タイトルの)重みを感じましたね。

―大変なことの具体的なことは。

羽生 いろいろと(笑)

―シリーズ全体を通しての感想を。初のタイトル戦だった訳ですが。

羽生 自分なりに勝った一局も負けた一局も悔いは残っていませんし、初めてにしては満足に指せたと思っています。

(中略)

―さて、年明けの順位戦で早々に昇級を決められましたね。第8戦で星いかんでは昇級されることは。

羽生 ええ、もちろん知ってました。でも、この日に決まるとは思ってませんでしたので、感想戦の最中に池崎さん(観戦記者)から聞かされた時はちょっと驚きました。

(中略)

―8戦目での昇級、A級にまた一歩近づいてきましたが。

羽生 去年次点だっただけに今期の昇級は本当に嬉しいですね。A級の話はまだちょっと先のことですから……。

―月並みですが今年のこれからの目標を。

羽生 やはりタイトルと昇級、そして竜王防衛です。

―人物として目標にされているのは。

羽生 ……難しい質問ですね。僕にとっては皆さん―。

―あえてお一人。

羽生 中原先生です。人柄とか40代で一番頑張っておられる。やはり一番の目標ということになると―。

―最後に一言。

羽生 今年のこの一年は今までの中で一番大切な一年だと思います。一生懸命頑張りたいと思っています。

―どうもありがとうございました。

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将棋世界同じ号、グラビアより。

これは、免状署名の練習。

別冊将棋世界での自戦記原稿

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「中原先生です。人柄とか40代で一番頑張っておられる。やはり一番の目標ということになると」

2015年、中原誠十六世名人に将棋ペンクラブ会報の新春対談に登場いただいた。

対談が終わった後の打ち上げの時、「そういえば、羽生四冠が昔の将棋世界で、目標とする棋士は中原先生だと話されていましたよね」と言うと、中原十六世名人は「えっ、本当なの?知らなかった。嬉しいね」と、驚きながら満面の笑み。

逆に、中原十六世名人が、このことをその時まで知らなかったことに驚いた。

とても和やかな夜だった。

将棋ペンクラブ会報対談に中原誠十六世名人が登場

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羽生善治九段が、通算タイトル獲得数を80期として、大山康晴十五世名人と並び歴代1位タイとなった2011年。

その際のインタビューで羽生三冠(当時)は、「一番印象に残っているタイトル戦は?」の質問に、自身にとって一番最初のタイトル戦だった、この第2期竜王戦七番勝負と答えている

羽生善治三冠が最も印象に残っているタイトル戦(前編)

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