将棋世界1990年7月号、羽生善治竜王(当時)の将棋世界指定局面戦〔対 中川大輔四段〕自戦記「一手の重さ」より。
今、将棋界で一番横歩取りを知っているのは誰かと聞かれたら、僕はためらわず「中川大輔」と答えるだろう。
その研究、実戦の豊富さは他の追随を許さない。だから、彼と対局する時は横歩取りを避けるかというと、そんなことはない。なぜなら、せっかくの勉強のチャンスを失ってしまうからだ。そんなわけで、今回の対局は前から楽しみにしていた。
(以下略)
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この時に行われたのは、前号まで「横歩取り専門学校」の講座を連載していた中川大輔四段(当時)との横歩取り指定局面戦。
中盤まで中川四段が優勢だったが、終盤に羽生善治竜王(当時)が逆転して勝っている。
この次の号では、違う局面での横歩取り指定局面戦(森下卓六段-中川大輔四段)が行われ、中川四段が勝っている。
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「だから、彼と対局する時は横歩取りを避けるかというと、そんなことはない。なぜなら、せっかくの勉強のチャンスを失ってしまうからだ」
このような姿勢の積み重ねが羽生九段を作り上げてきたのだと思う。
目先の勝負にこだわらず、もっともっと大きなものを見据えている。
難しいことだけれども、少しでも見習いたいものだ。