将棋世界1977年10月号、原田泰夫八段(当時)の「本手とウソ手」より。
最近ご面談したなかで感服したのは小林孝三郎さんである。小林コーセー社長、化粧品ひと筋の大もの。80歳で現役の社長、早朝に出勤して週一回はゴルフ、これから原田に将棋の稽古をうけたいとおっしゃる。
少なくとも10歳か15歳は若く見える。ゴルフで足を鍛え、将棋で精神、知能を磨かれよう、まことに結構である。社長の情熱は社員に反映して隆盛になる筈。天下は広大、世の中には常識では計れない偉い人がいるものと感心した。
小林さんは昔指したことがあるという。
将棋は数十年の空白があっても、特別弱くなるものではない。80歳で初めての稽古、さてどんな腕前か。
(以下略)
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小林孝三郎さん(1897年-1995年)は、高等小学校を卒業して15歳から化粧品会社で働き始め、49歳の時に独立(小林コーセー設立)。
一代でコーセーを大企業に育て上げた。
小林孝三郎さんの略歴については、以下に詳しい。
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「80歳で初めての稽古、さてどんな腕前か」
この時は、平手の稽古将棋で原田泰夫八段(当時)が勝っている。
原田泰夫九段はコーセーで将棋の師範となる。
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原田九段には将棋ペンクラブ名誉会長も長く務めていただいた。
将棋ペンクラブ大賞の副賞でコーセーの化粧品が受賞者に贈られるが、原田九段からコーセーに副賞をお願いしたのがはじまりで、現在に至っている。
コーセーの方々には、原田九段の口癖だった「感謝感謝」という思いでいっぱいだ。