三浦弘行五段(当時)「この対局が行われる前日は、兄弟子である藤井猛六段の結婚式でした」

将棋世界1996年6月号、大崎善生さんの「編集部日記」より。

将棋世界1996年6月号より、撮影は河井邦彦さん。

3月31日(日)

 新幹線で東京へとって返して、藤井六段の結婚披露宴へ出席。囲碁インストラクターの才媛、新婦の佳七子さんはとても明るく活発だ。友人の皆さんの挨拶も新婦がワイワイ、それを藤井さんは黙ってうなずいているで一致している。媒酌人の西村八段が、新婦が新郎のカバンに愛を告白した手紙を忍びこませ、新郎がそれを部屋のタンスに貼って喜んでいたと暴露し大喝采。実に楽しいカップルのようです。お幸せに。

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NHK将棋講座1996年8月号、河口俊彦七段の「ザ・棋界」より。

 三浦君は異色の棋士と言えるだろう。雰囲気が優等生棋士と違うのである。時代劇に出てくる、用心棒でもやっている素浪人、といった感じがある。対局中など、実にとっつきにくい。記者が感想戦を取材するのも、しりごみするのではないか。

 それが、なにかの拍子で話をすると、あまりの好人物ぶりに面食らってしまう。そういうところは高橋九段とそっくりだ。数か月前、藤井六段の結婚式のとき、三浦君は弟弟子なので受付に立っていた。黒服に白ネクタイはよかったが、肩から背中にかけてフケが落ちていて目立つ。で、ちょっと注意したら「どうもすみません」とにっこりしたときは、少年のようだった。

(以下略)

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NHK将棋講座1996年7月号、三浦弘行五段(当時)のNHK杯戦1回戦〔対 南芳一九段〕自戦記「居玉は優勢になりにくい」より。

NHK将棋講座1996年7月号より、撮影は河井邦彦さん。

  この対局が行われる前日は、兄弟子である藤井六段の結婚式でした。

  新郎、新婦とも実に幸せそうな笑顔をされていて、本当に素晴らしいカップルです。

  どうぞ、末永くお幸せに――。

  それでは話を将棋に移します。

(以下略)

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藤井猛九段と羽生善治九段は、誕生日が2日違いで、結婚式が3日違い。

藤井猛竜王(当時)「誕生日は2日違い、結婚式は3日違い。しかし将棋では大先輩」

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「媒酌人の西村八段が、新婦が新郎のカバンに愛を告白した手紙を忍びこませ、新郎がそれを部屋のタンスに貼って喜んでいたと暴露し大喝采」

見えるところに貼っておきたい気持ちがよくわかる。

あるいは、机の奥に厳重に永久保管をしておきたくなるところ。

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「藤井六段の結婚式のとき、三浦君は弟弟子なので受付に立っていた」

「新郎、新婦とも実に幸せそうな笑顔をされていて、本当に素晴らしいカップルです」

役者が揃っているという感じで、もし映像が残っていれば、多くのファンの方に喜ばれるに違いない。

藤井猛九段と三浦弘行九段は、群馬県沼田市と高崎市という関係で、奨励会時代からの付き合い。

藤井猛少年と三浦弘行少年の「山賊ラーメン」「海賊ラーメン」

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三浦弘行五段(当時)の自戦記をもう少し見てみたい。

NHK将棋講座1996年7月号、三浦弘行五段のNHK杯戦1回戦〔対 南芳一九段〕自戦記「居玉は優勢になりにくい」より。

 今回の対戦相手の南九段とは、これまでに2局対戦しました。

 2局とも南先生の先手なので、こちらが素直に居飛車で追随したので、がっちりした相矢倉でした。

 対戦成績こそ五分五分だったものの、最初の一局はアナグマに組み替えられ、その後、がりがりと攻められて完敗。

 後の一局も難解な終盤で、南先生が1分将棋となったので、なんとか勝たせていただきました。

 後手番だったからしかたないにせよ、主導権を握れなかったのが心残りでした。

 だから今回は、先手番を握ったら積極的に行こうと心に決めていました。

 私はテレビ対局では非常に後手番が多く、もし今回も後手番になったら、どういう戦形を指したのだろう。

 純粋に飛車を振るつもりはありませんでした。やはり南先生に追随して、相矢倉になった可能性が高いと思います。

 それはなぜか。

 南先生は先手番だと、相手が避けない限り矢倉が多く、相手が飛車を振った場合でも、ほとんど居飛車穴熊を指されません。

 にもかかわらず、矢倉だと穴熊に組み替えることがあるのです(同じ穴熊でも意味合いはまったく違う)。

 何かの本で読んだのだが、羽生七冠王も南九段と対戦されると、意識して相矢倉を指されるらしいのです。

 どうやら相手が一本気だと、こちらも相手の得意形をはずそうという気が起きないようです。

 勝敗を超えて、いい将棋を指そうとする気構えが、がっちりとした将棋を指させるのでしょう。

(以下略)

NHK将棋講座1996年7月号より、撮影は河井邦彦さん。

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このNHK杯戦の解説は村山聖八段(当時)。三浦五段が勝っている。

「どうやら相手が一本気だと、こちらも相手の得意形をはずそうという気が起きないようです。勝敗を超えて、いい将棋を指そうとする気構えが、がっちりとした将棋を指させるのでしょう」の言葉がとても格好いい。

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三浦五段は、この後、棋聖戦挑戦者決定トーナメント準決勝で米長邦雄九段を、決勝で屋敷伸之七段を破り、羽生善治棋聖への挑戦を決めている。

藤井猛六段(当時)は全日本プロトーナメント決勝五番勝負で屋敷七段に0勝3敗で敗れ、棋聖戦挑戦者決定トーナメント準決勝でも屋敷七段に敗れている。

三浦五段は兄弟子のかたきを討つ形となった。

そして棋聖戦五番勝負では棋聖位を奪取し、羽生七冠が保持するタイトルの一角を初めて崩すこととなる。