「七冠王に初めて黒星をつけた棋士」

NHK将棋講座1996年7月号、大矢順正さんの「将棋マンスリー 今月の話題」より。

 関西の囲碁将棋記者クラブでは、4年前に、その年に最も活躍した棋士に「関西囲碁将棋記者クラブ賞」を設定した。平成7年度の受賞者は、羽生七冠王達成直後に初の黒星を付け、順位戦でもB級1組に昇級した井上慶太七段に決定した。

 井上は兄弟子の谷川九段が、虎の子の王将を羽生に奪われた直後の勝ち抜き対抗戦で勝利し「兄貴の敵討ち」と時の人になったのは記憶に新しい。

 これで対羽生戦も3勝3敗の五分の成績は立派で、大いに胸を張れる。

 表彰状の文言がユニークなので紹介しておこう。

表彰状

関西囲碁将棋記者クラブ賞

井上慶太殿

 あなたは日本中が羽生七冠王誕生に沸くなか最初に黒星を付けた棋士として名を上げ、また狭き門の順位戦ではいち早く昇級をきめるなど、その活躍は見事でした。今後は近い将来のA級入りを期待するとともに七冠の一角を崩す先鋒となられることを願いここに賞を贈ります。

平成8年4月19日 関西囲碁将棋記者クラブ

「注目されることはありがたい。すぐにまた羽生さんと対局できるよう頑張ります」は、受賞者のコメント。

将棋世界1996年5月号より。

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「井上は兄弟子の谷川九段が、虎の子の王将を羽生に奪われた直後の勝ち抜き対抗戦で勝利し『兄貴の敵討ち』と時の人になったのは記憶に新しい」

羽生善治七冠王に初めて土をつけたのが、谷川浩司九段の弟弟子だった井上慶太七段(当時)というのがドラマチックだった。

そしてB級1組への昇級。(もう一人のB級1組への昇級は浦野真彦七段(当時))

麻雀で言えば、(七冠王に初めて土をつけた)+(B級1組への昇級)で、数え役満になったような雰囲気だ。

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「今後は近い将来のA級入りを期待するとともに」

井上七段は、この受賞に応えるように、1期でB級1組を駆け抜け、A級に昇級する。

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「注目されることはありがたい。すぐにまた羽生さんと対局できるよう頑張ります」

1996年度は羽生七冠との対局はなかったが、1997年度A級順位戦の対羽生戦で井上八段は勝っている。

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井上九段は、藤井聡太二冠にも1勝0敗。

井上九段は、「七冠王に初めて黒星をつけた棋士」であるとともに、「藤井聡太二冠に勝った最年長棋士」「藤井聡太六段に唯一の黒星を与えた棋士」でもある。