昨日の王座戦第3局は、渡辺明竜王が勝って王座を獲得した。→棋譜
結果は渡辺竜王が3連勝でストレート勝ちだったが、各局とも内容的には僅差。
特に、第2局と第3局は、渡辺竜王ファンから見たら、胃の痛い時間が午後早くから終局直前まで続いたのではないだろうか。
—–
今年の2月に行われた渡辺明竜王と木村晋介将棋ペンクラブ会長の対談(会報春号)より抜粋。
渡辺明竜王が語った羽生善治名人(当時)。
木村 去年の竜王戦の羽生さんとの戦いは印象的でしたが、羽生さんというのは特別な人ですか?
渡辺 そうですね。やはり実績が抜きん出ていますから。対戦する時に周りの人が一番注目するのが羽生さんとのカードですね。私のブログのアクセス数も、羽生さんと対局した翌日は増えますから。
木村 将棋はどうですか。他の人と違うものは感じますか?
渡辺 それはよく聞かれるのですが、技術的なところで羽生さんの将棋が具体的にどこが違うかというと難しいところがあります。例えば攻守のバランスがいいと言われるのですが、攻守のバランスがいい人はいくらでもいるので、棋風的な部分と言うよりは、正確性、ミスが出ないというところだと思います。ただ、将棋の場合、正確に指せた率が数字で出ないのでわかりにくいですね。どれくらい正確に指せたかは当事者でないとわかりません。
木村 羽生マジックと言うから、奇抜な手を指しているかというと、そうではなく、あくまで正確性に羽生将棋の本質はあるということですね。ところで、バトルロイヤル風間さんの今年の正月の漫画に「あいつが羽生を羽生と思っていない」というのがありますよね。週刊将棋でしたけど。
渡辺 あれは傑作でしたね。
木村 年賀状にわざわざルビをふって「はにゅうぜんじ」という。他の方は羽生善治ブランドを意識し過ぎてやられてしまっているところがあると思うのですが、渡辺さんはいかがですか?
渡辺 それはありますね。 羽生さんの信用力というか、それは一生消えることはないです。私が小学生高学年の頃、羽生さんは七冠王でしたし、そういう信用の度合いは全く違います。初めて指した時は、自分が実際指すということだけで緊張しましたし。
木村 羽生さんのほうから見ると、苦手が一人できちゃったんじゃないかな、という見方もありますね。
渡辺 たまたま竜王戦では、こちらが2回幸いしましたが。
木村 (中略)バトルロイヤル風間さんの漫画で、羽生さんがおみくじを引いたら大凶だった。こんなことがあるのかと驚いた羽生さんが「もしもし渡辺くん、まちがえて君のおみくじをひいちゃったよ」というのもありました。こういうのはファンが喜ぶと思うんですよね。羽生さんと渡辺さんの仲は実際悪いわけはないのですが、多少仲が悪いくらいのふりをして、昔の木村-升田、大山-升田のような、ファンが喜ぶような演出上の対抗形というのも人気が出ると思います。
渡辺 観戦記を読むと、昔の棋士はいろいろドラマがあったようですね。
(以下略)
—–
羽生・渡辺両者の激戦は、今後も長い間、ファンを魅了してくれることだろう。
まだまだ、この二人の戦いは続く。