「私、森内の妹です」

将棋マガジン1995年6月号、鹿野圭生女流初段(当時)の「タマの目」より。

 東京で森内新八段に会った。

「鹿野さん、今度クイズ番組に出るんです。収録が大阪なんで、応援に来て下さいよ」と頼まれた。もちろん二つ返事で引き受けた。当日は、ちょうど来阪していた杉本四段を誘ってスタジオに応援に行った。すると、まるで見知らぬかわいい女の子から声をかけられた。

「鹿野さんですか?」

「エエ、そうですが……」

「私、森内の妹です」

と自己紹介された。

 思わず、かわいい、兄貴に似てない、と言いそうになるのをぐっと飲み込んで、「わざわざ、横浜から応援に来たの?」と月並みな質問をするにとどめた。答えはイエスに決っているのに・・・。

―収録後―

妹「さあ、1万円だから4人で2500円ずつありますよね。何食べます?」(森内八段のクイズの獲得賞金金額である)

森内「うるせィ」

妹「バックにベルトにお財布に、包丁もありますよ」(参加賞)

杉本「いやあ、今日は見に来て良かったですよ」

タマ「ホント、ホント。おもしろかった。あの問題わからへんかぁ?」

森内「うるせィ」

 結果はご推察通り、惨たんたるものでした。しかし、さすが森内君。食事の後、ゲームセンターでは、再びクイズのゲームをやっていました。

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森内八段(当時)の無念さが本当に伝わってくる素晴らしい文章だ。

東京での収録なら、もっといろいろと気の紛らわせようはあったのだろうが、遠征地の大阪では辛いものがある。

「うるせィ」は超絶妙。妹さんのキャラクターも最高だ。

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このクイズ番組は、時期的に、テレビ朝日系で朝日放送制作の「アタック25」であったものと思われる。

アタック25は、獲得パネル獲得数✕1万円が賞金金額。

アタック25は獲得パネルをオセロのように取り合うので、正解数とパネル獲得数は一致しないが、結果的に1枚が残ったということだ。

Wikipediaの森内俊之名人の項では、

特にクイズはかなりの実力で、パネルクイズ アタック25の1995年4月23日(第1011回)放送では予選会を勝ち抜いた一般出場者として出演し、パネル一枚の差で優勝を逃す。A級に昇級した初年度でのことでもあり、司会者の児玉清は番組冒頭で「今週は見たことのある方が出場されています」と紹介した。後、同番組の1500回記念大会(「知性派タレントクイズ頂上決戦」、2005年3月20日)では丸山和也、高田万由子、やくみつるを破って優勝し、フランス縦断旅行を獲得した。

と書かれているが、”パネル一枚の差で優勝を逃す。”の部分は誤りということになる。

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昨日、「島研」のメンバー4人によるスペシャルトークショーが行われた。

トークショーに参加したMさんのtwitterでのつぶやきによると、

将棋ウルトラクイズ第一問!「森内名人の妹さんのために獲得したクイズの賞品は?」A自転車Bディズニーランドチケット (中略)答、自転車。森内先生がコメントで「でも、結局自分で乗ってましたね」と言っていた。

森内名人と羽生二冠の共通点は、二人兄弟の長男で妹がいるということだ。