将棋世界1993年9月号、鈴木輝彦七段(当時)の「対局室25時」より。
ところで、▲6八金引の長考中に桐谷さんが顔を見せたので、三日前の快挙を素直に申し上げた。
「大型新人の久保君に勝ったんですね」と言うと「そうなんだ。三段リーグに入っても結構やれるかもしれない」と嬉しそうに話した。いつもは”降級点候補”と自ら言って、ほっとけば襷を掛けて「助けて下さい」「男にして下さい」とでも言い出しそうな雰囲気だが、未来の大器に勝って大いに自信を付けたようだ。襷の字も「昇級候補」に書き換えたのだろうか。
「ショックを受けたのか、久保君は次の日の銀河戦でも女流の清水さんに負けちゃったんだ」と桐谷さんは続けた。
その久保君は藤井君達と朝まで麻雀を打ち、フラフラの状態で対局場まで行ったようだ。
何だか久保君には不名誉な勝敗だし、行動になるのかもしれないが、これはこれでいいと思う。サラリーマンや公務員ではないのだから多少は許されていい筈だ。それに、彼はまだ17歳なのである。負けを持て余すのは当然すぎる事だといえる。
ただし、清水さんの勝利をフロックという気はない。私なら久保君が2日徹夜して来ても負かされるだろうから。
(以下略)
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久保利明四段(当時)にとってこの期は初めて参加する順位戦。
C級2組順位戦、1戦目は山口英夫七段(当時)に勝ったが、2戦目で桐谷広人六段(当時)に完敗している。
その日の夜に、同じC級2組だった藤井猛四段(当時)達と徹夜麻雀をしたしたということになる。
藤井四段もこの日、新進気鋭の佐藤秀司四段(当時)に敗れている。
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森内俊之四段は順位戦でベテランの吉田利勝六段に敗れて、その日、横浜の自宅まで走って帰っている。
→森内俊之四段(当時)「ひどかったす。死にました。もう投げます」
誰に敗れたか、ということではなく、負けた将棋の内容が悪かったことが、自分を痛めつけるような行為に走らせるのかもしれない。
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羽生善治五段(当時)が順位戦でベテランの剱持松二七段(当時)に敗れた時も週刊将棋では大きく取り上げられた。
ベテラン・古豪が若手棋士に対して意地を見せる場面はいろいろとあった。
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桐谷広人七段は、昨年からテレビのバラエティ番組で人気急上昇中。
株主優待券だけで生活できるほどの株式トレーダーだ。
ちなみに、株式ファンドを組んでいる機関投資家は、株主優待券をチケットショップで換金し、そのお金をファンドに投入している。
チケットショップに株主優待券が溢れているのはそういうことが背景にある。