将棋マガジン1991年7月号、林葉直子女流名人(当時)の「私の愛する棋士達 第7回 羽生善治棋王の巻」より。
直子の羽生善治分析
特徴
東京都在住。20歳。AB型。
当然のことながら独身!!
小学校一年生で将棋を覚え、わずか11年で竜王位を獲得するという驚異的な記録を持つ超天才。
素直で可愛いところは、世の一般の青年よりもずっと魅力的である。
タイトルホルダーのほとんどのお方が羽生善治に挑戦者になってほしくないと思っているほど・・・である。
口グセ
「いや、まぁ、そうですねぇ」
将棋界では、このセリフを使う棋士が多いが羽生棋王も例にもれずこの口調をご愛用。
他には、
「ありえません」
とキッパリいい切る様にして言うのが独特の言いまわし。
これは口グセではないが、写真を撮るときに下唇を上の歯にかぶせるようにして口を一文字にするのが羽生流。
バトルロイヤル風間さんの描かれているマンガはそれに酷似している。
このしぐさ、とってもチャーミングだと私は思う。
趣味
一番の趣味は囲碁だそう。
初段ぐらいの実力とのこと。
モノポリー等のゲームはけっこうお好きのようだ。
棋風
悪い将棋も妖しい手を連発し勝ち切る。
腰の重い渋い将棋である。
しかし、終盤の鋭い寄せには感動させられる。
さて栄光のタイトル竜王を手中にする七番勝負第6局、1図をご覧いただこう。
さて、ここでじっくり羽生善治になったつもりで考えていただきたい。
図は△3四同金と後手が指した局面である。
そして、おまけにもう一題。
惜しくもタイトルを獲られはしたものの、素晴らしい内容を見せつけてくれた羽生棋王の一勝した、その将棋の決め手となったのは何か、じっくり考えていただきたい。
2図がそれである。
谷川竜王も読んでなかったという名手とは何か。
私もこんな手が指せるようになりたい、とタメ息が出るような一手である。
持ち駒を使って―とのヒントだけを教えておこう。
これが解れば、貴方も超天才かもしれない。
(上の図の解答)
▲4五銀打
(△4五同銀▲同銀△同金ならば、▲2四歩△同歩▲4一角の意図)
(下の図の解答)
▲2二角
(△2二同玉と呼んでから▲3四歩とすれば、これが詰めろ!)
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「いや、まぁ、そうですねぇ」と定常的に言い続ければ、将棋が強くなれるかもしれない。
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▲4五銀打も▲2二角も、特に▲4五銀打は私が1年考えても浮かびそうにない絶妙手。
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2010年の第4回日レスインビテーションカップ、辰巳五郎さんの「中倉彰子初段-林葉直子さん観戦記」より。
林葉さんは、1995年8月24日に日本将棋連盟に退会届を出した。将棋が嫌いになったわけではないが、情熱が冷めたという理由だった。
日本将棋連盟で退会記者会見をしたその夜、林葉さんは新宿の料理店で行われていた羽生善治六冠(当時)と畠田理恵さんの婚約お祝いの席へ駆けつけている。林葉さんは羽生六冠の実力と人間性を高く評価しており、お別れの挨拶も兼ねていた。