近代将棋1994年4月号、中井広恵女流名人(当時)の「広恵のなんでも講座」より。
複雑な女心
自分で言うのも恥ずかしいが、「写真で見るより綺麗ですね」と言われることが多い。
「そうですか?ありがとうございます」といつも答えるのだが、はたしてこれは誉め言葉なんだろうか?と疑問に思う。
”写真で見るよりはまだマシだなぁ”という意味なのではないだろうか。
「広恵ちゃん、綺麗になったねぇ」
と声をかけられることもあるが、これにしたって”昔はひどかったけど、少しは見れるようになったなぁ”
本音はこうだろう。
あと、将棋を知らない人には 「将棋を指す女なんていうから、どんな怖い人かと思ったら、普通じゃない」なんて言われたりもする。
女流プロったって、プロレスじゃないんだから、体型は関係ないでしょう、正確?それは怖いかもねぇ・・・。
以前、大山先生が
「女性は綺麗な順に将棋が強い」
とおっしゃられた。
もちろん、誰が一番で、二番目があの人で・・・なんていう順位は発表しなかったが、私はどうも合点がいかない。
「大山先生も、うれしいことを言ってくれるわねぇ」
と喜んでいたのが林葉直子。
彼女の女流王将位の就位式場でのことだったので、もちろん大山先生の直子嬢が一番強いという意味でおっしゃったのだが、でも、堂々とそう言い切ったあとで
「あ?私の事じゃないかもしれないんだ!あははは」
と笑っていたのが彼女らしい。
彼女は私と違って
「写真で見るように、綺麗ですね」
と言われるのだが、彼女もまたあまりうれしくないらしい。
どうやら、美人に”美人ですね”と言っても、別に何とも思わないようだ。
それなら直子嬢には
「テレビや写真の方がよっぽどキレイですね」
これならどうだ。美人ですねと声をかけるよりも、何倍もインパクトがあって、あなたへの印象も強くなる。
ただ、平手打ちが飛んできても、私は知りませんが・・・。
直子嬢は、
「かわいい人ですね」
と言ってもらうのが、一番嬉しいみたいだョ!
(中略)
永遠の活力
女流名人戦も終わり、ホッと一息ついたところだが、タイトル戦の間、大勢の方々に励ましのお便りをいただいたり、”がんばって下さい”と声をかけていただいたりした。
本当にファンの皆様の声援は私にとって永遠の活力である。ありがとうございます。
でも、結婚して、ファンレターがガクッと減ってしまったのはショック!!
以前は、
「僕のお嫁さんになって下さい」
なんて熱烈なラブレターのようなお手紙もあったのに、今ではそんなのゼーンゼーン。(あたりまえか)
まあ、それはおいといて、皆さんの中には”棋士の方とお知りあいになりたい”と思っている方、また、”知りあえたんだけど、これからもおつきあいしたい”という方、いらっしゃるでしょう。
そこで、今回はいかにして棋士と上手につき合うか―です。
ポイント1 棋士は朝が苦手
棋士の家に電話するのは、お昼以降、まちがっても朝の電話だけは避けて!
10時、11時でも。
「何時だと思ってんだ」
とどなられかねない。
まぁ、中には森下七段や島七段のように、朝6時頃起きるかわった方がいらっしゃるが・・・(どっちが普通かなぁ)
ポイント2 ギャンブル嫌いはダメ
棋士はとにかく賭け事が大好き。競馬、競輪、競艇、パチンコ。海外ではカジノに顔を出す。
それ以外?それ以外はマズイでしょう。金品を賭けてはいけないんだから。本当のところはどうなんだって?それは私にもわかりませんけどねぇ・・・フフ。
ポイント3 お酒が好き
棋士は酒好きが多い。対局が終了後は、数人で新宿あたりにくり出すようだ。
女流棋士も、稽古先ではかわいい声で
「私、全然飲めないんです」
なんて言っているようだが、そういう女性に限って強い。
ポイント4 行動は平日に
棋士は土、日に仕事が入ることが多い。人ゴミも苦手なので、休日の行動はヤメた方がいいかも。待ち合わせは、平日の昼間が最適。(普通の人はお仕事があるから無理かなぁ)
このポイントをおさえれば、あなたはもう十分、棋士とうまくつき合っていける筈。
で、知り合いになるには、どうしたらいいかって?それは3月26日の女流棋士20周年パーティーにいらっしゃること。きっと素敵な出会いが待ってるヨ!会費さえ振り込んでいただければそれでOK(宣伝がわざとらしいかナ)
大勢の御参加、お待ちしてま~す。
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棋士とつき合うポイントは、女性のために書かれたもの。
男性向けの、女流棋士と上手くつき合う法ではない。
現代では、ポイント2とポイント3の必修科目度が低くなってきているかもしれないが、押さえておいて損のない心得であることには違いない。
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私が初めて中井広恵女流六段にお会いしたのは、2004年2月の将棋ペンクラブ会報新春対談でテープ起こしを担当した時のこと。
やはり、「写真で見るよりずっとずっと綺麗だ」というのが私にとっての第一印象だった。
そして、私が初めて林葉直子さんにお会いしたのは、2005年6月に林葉さんが経営していた六本木の「ウーカレー」でのこと。
やはり、「写真そっくりそのままの林葉直子さんだ」というのが私が感じた第一印象。
そういう意味では、私だけでなく多くの人が同じように感じていた、ということをこの文章を通じて最近になって知り、ものすごい納得感を得ている。
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佐藤康光九段も、写真で見るよりも生で見たときのほうがずっと美男子だと2003年に思った。
最近では、NHK杯戦の記録係を担当している甲斐日向三段が、写真やテレビで見るよりも実際のほうが数段甘いマスクであると感じている。