女性に将棋を好きになってもらう秘術

近代将棋1994年1月号、中井広恵女流名人(当時)の「広恵のなんでも講座」より。

近代将棋同じ号より。

 今月からこのページを担当することになりました。私はH葉女史とは違い、お下品なお話はあまり得意ではありませんので、期待された方には、たいっへん申し訳ございませんが、あしからず。

 真面目?に楽しくやっていきたいと思いまあす。

男は女らしく 女は男らしく?

 先日の女流王位戦で森九段にこんな興味深いお話を伺いました。

 「将棋を指している時、男性棋士は女性的なんだよ。まず、相手の狙いを消そうとする。考え方が受け身なんだ。その点、女流棋士は男らしい。自分の考えを通そうとする。男がふみ込めない順を女はふみ込んでくるからなぁ」

 そういえば、以前若手棋士にも

 「女流棋士の将棋って直線的だよね」

と言われたことがあった。

 ということは、女流棋士はもっと女らしくなれば、男性棋士のように強くなれるかもしれない。男性棋士も、もっと男らしくいけば、神様のように勝ちまくれるかも。

 ただ、ここで断っておきたいのは、これはあくまで将棋盤の上での事でありまして、普段はとっても男らしい棋士の方ばかりです。

 女流棋士の方も・・・探せば女らしい人が何人かいるかな。

3Kを克服するには?!

 今、将棋界ではいかに女性に将棋を普及するかが課題となっています。いわゆる3K暗い、汚い、稼げない?(これは違うか)のイメージが強かった将棋を女性にスキになってもらうためには、やはり羽生竜王や、郷田五段のようなアイドル路線でうるしかない!と常日頃から考えておりました。この点ではH葉女史とも意見が合います。

 内藤九段が講演の時にこうおっしゃってました。

 「結婚されてる方は奥様に、そうでない方は、恋人に是非将棋を教えて下さい。そうすれば、まず共通の趣味ができます。将棋のイベントなどに二人で参加できればデートにもなります。

 あと、もう一つ良いことは、奥様が将棋に理解を示してくれます。将棋で出掛ける時もイヤな顔せず『将棋なら安心だわ』と機嫌よく送り出してくれます」

 本当に内藤先生のお話は何度聞いても面白く、参考になります。

 奥様、恋人、お子様に将棋を教えていただければ、それだけで将棋ファンはかなり増えます。最初の手ほどきはプロが教えても皆さんが教えても、ルールは同じですからね。

 では、どうやって女性に興味を持ってもらうか。これがとっても難しい。 なんたって女性はわがままですからねぇ。中井広恵ほどじゃない?まぁ、それはいいとして、じゃあま、今月の講座は『いかに女性に将棋を好きになってもらうか』にしましょうか。

ポイント1 女はいい男に弱い

 とにかく、最初は将棋をおしゃれなゲームだということをわかってもらわなくてはなりません。先程もいいましたが、こーんなにかっこいい棋士がいっぱい?いるんだということを知ってもらわないと。

 ですから、わざと羽生竜王のグラビアが見えるように本を開いておきます。(この時、くれぐれも棋士を間違えないように!!)

 ただ、奥様や彼女があなたより羽生竜王の虜になってしまっても、責任は負いかねますが・・・。

ポイント2 女は負けずギライ

 女性は負ける事が大キライです。最初からこてんぱんに負かしてしまったら、それこそヤーメタ!!ということになってしまいます。ですから、最初は徹底的に負けてあげましょう。そうすれば、女は愚かな動物ですから、実力で勝ったのだと勘違いいたします。それによって勝つ楽しさを見つけるのです。

ポウント3 女はおだてに弱い

 これはポイント2の続きで、おもいっきり負けたあと、うんざりするくらい相手を誉めてあげます。そうすれば、必ず女は図に乗ります。

 思い込みの激しい女性ほど『もう一局』と言い出すでしょう。

ポイント4 女は損得にこだわる

 初心者のうちは駒の価値がわかりません。だから、平気で駒損してしまいます。例えば角と銀を無条件で交換してしまったら、

 「それは一万円と千円をタダで交換したようなものだよ」

とお金にたとえて教えてあげましょう。ことに、女性はお金には細かくなりますから。

ポイント5 女は物に弱い

 それでもダメだった場合、女性は物をもらうことにいじょうに弱い。

 「僕に勝ったら好きなものを買ってあげる」

と約束しましょう。そうすれば、プレゼントほしさに何局も将棋を指したがります。

 ただ、ここで気をつけなければならないのは、最初は必ず負けてあげなければならないのだから、ある程度の出費は覚悟しなくてはならないということです。

 さあ、この5つのポイントをつかめればもうあなたの奥様は将棋?の魅力にとりつかれることでしょう。

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これは私が言っているのではなく、1993年11月頃の中井広恵女流名人(当時)が書いていることなので、そこのへんはよろしくお願いしたい。

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しかし、現代で考えても、全く将棋に興味のない女性に将棋を好きになってもらう方法としては、これがベストなアプローチかもしれない。

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そういう意味では、観る将棋ファンだけれども指すのが苦手な女性に対しても、ポイント2から5までは、男性として心がけるべきことだろう。

来年の将棋ペンクラブ交流会では、私も実践をしたいと思う。

女性に対する私の教え方はサディスティックだという風評を一掃しなければならない。

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それにしても1993年のこの当時、将棋に3Kのイメージが皆無なわけでもなかったのは確かだ。

このようなイメージを一変させたのが1995~1996年の羽生六冠・羽生七冠フィーバーだった。

プロ棋士という存在が広く多くの人に知られるようになり、女性将棋ファンや子供の将棋ファンが増えるきっかけともなった。

もちろん、当時の大多数の人は、将棋に興味を持ち続けるわけではなかったが、将棋に対する印象が多くの人にとって明るくポジティブになったことは確実だ。

今思い返してみても、羽生七冠誕生という出来事は、想像以上に将棋界に素晴らしい影響をもたらしたのだと感じる。