森信雄六段(当時)「アチャー、それを先にゆうてくれたら、絶対に勝てんかったのに」

将棋世界1991年7月号、大崎善生さんの編集後記より。

 最近、絵画鑑賞に凝っているという森信雄五段。「大崎さん、モンジリダニって知ってますか?」 「えっ?」 「知らんやろ、わし最近凄い好きでねえ、何かあの絵見てると安心する」 「モジリアニじゃあ」 「ふん、知っとるのか。よもや、大崎さんが知っとるとは思わんかった。せっかく難しい名前覚えたのに、つまらん」

 一事が万事この調子。森先生と話していると心の奥の奥に、光が射すように楽しくなります。

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将棋世界1993年8月号、大崎善生さんの「全国棋士派遣プロジェクト 滋賀」より。

 6月13日、森信雄六段と記者は滋賀県甲賀郡の水口将友会を訪ねた。

(中略)

 1時から始められた指導対局は、「全員といけますよ」という森六段にぶつかり稽古のように18人が次々と挑んでいく。「全勝を狙っとったのに」と上手をくやしがらせたのは飛車落ちで挑んだ下さん。上手玉を寄せ切り、皆の喝采を浴びた。熱の入った指導対局は約5時間。プロとの駒落ち戦に不馴れなのか、やや下手の指し手にぎこちなさが目立つ。これを機に森六段が時折、訪問するということなので、プロ筋の呼吸をぜひ身につけてもらいたいものだ。

 打ち上げは近江牛のスキヤキをつつきながらの楽しいひと時。

 「うちんとこには25の独身の娘がおるんですが・・・」と某氏。「アチャー、それを先にゆうてくれたら、絶対に勝てんかったのに」と森さん。「うちにも娘がいます」と誰か。「アチャー、何でそれをゆうてくれへんのや」。17勝1敗の成績を気の毒な程に悔やむ、変な上手なのだった。それにしても、こんな感じでアッという間にうちとけてしまう森さんはさすがや。

(以下略)

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大崎善生さんと森信雄七段。

このような二人の交流の積み重ねが、2000年に出版されることになる大崎善生さんの「聖の青春」の底流に流れる暖かさに結び付いているのだと思う。

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今日のNHK杯戦は準決勝の大石直嗣六段-丸山忠久九段戦。

解説は片上大輔六段。

大石六段、片上六段とも森信雄七段門下。

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森信雄七段は、弟子たちから還暦祝いは何がいいかと聞かれた時、「一門で園田競馬場に集まって楽しみたい」と答えているほど、弟子たちと園田競馬場へ行くことを何よりの楽しみとしている。

そのような中で大石六段は、還暦祝いが行われるよりも前から、師匠夫妻と一緒に園田競馬場へ行っている。

森信雄七段はブログで、「何よりも師匠孝行の筆頭かもしれない?」ととても喜んでいる。

大石四段と園田競馬に行く(森信雄の日々あれこれ日記 2011年8月4日)

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大石直嗣六段のお父様は、建築事務所を経営するかたわら、営業日が土曜・祝日・第5日曜日の「志紀将棋センター」を開いている。

ホームページでは、お父様が「週間メモリー」で近況報告、雑感などを書かれており、お父様の温かい人柄が表れているような文章だ。

大石六段はお父様から”ピョンタ”と呼ばれており、大石六段も「週間メモリー」では近況報告を書いている。

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