渡辺明四段(当時)の超最先端研究

近代将棋2003年5月号、渡辺明四段(当時)の連載自戦記「18歳高校生棋士 トップを狙え!」より。

 プロ野球は開幕目前です。ひいきのヤクルトは、やはりペタジーニが抜けたのが大きく下馬評課低いようです。

 西武から移籍の鈴木健、高卒ルーキーの高井が鍵を握っていると思います。少しでも巨人に迫れればいいのですが。

 最近、なぜか食が細くなりました。この1ヵ月で4キロやせましたねん、大丈夫か自分。高校は無事に卒業できました、取り急ぎ報告まで。

 今月は青野九段との王座戦二次予選を解説します。青野九段とは本局が2回目の対局。昨年の11月に勝ち抜き戦で対戦したときはいいところなく負けてしまいました。本局もそのときと同じく横歩取りに。

 1図までは前回の対戦と同じ。今回も飛を3四に置いたまま▲3六歩~▲3七桂とする青野九段創案の指し方でこられると思っていました。

 

 前回は1図で△8五飛とし、▲7七桂△2五飛▲2八歩と進みましたが、どうもしっくりきませんでした。△4一玉▲3六歩△5一金▲3七桂△6二銀の展開も研究してみましたが、いつでも▲4五桂があり、自信が持てないので断念。

 対局前日にどうしようかと困っているところに先月号でも登場してもらった村山君(慈明三段)から、

「青野-谷川戦(2002年7月A級順位戦。▲8三歩〔途中図〕に△5二飛と進んだ)の変化で2図〔途中図から△7八馬▲8二歩成〕になったとき△3三銀とされるとわからないのですが」

 とメールが。ふ~んと思いながら毎日新聞の青野-谷川戦の観戦記をひっぱり出して研究。

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 そうそう、今年度から切り抜きを始めたんです。毎日切るのは面倒なんで3、4日に一度まとめて切り抜いてます。

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 それには△3三銀は書いてなく、△3三歩は▲7一と△同金▲7八銀△3四歩▲4五桂△8八飛▲7九銀△8二飛成▲5三桂成(参考1図)で先手良し。と書いてありました。

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 早速△3三銀を研究してみると、なんだか後手がやれそうな気がしてきたので、ネット将棋で関西奨励会の佐藤天彦君(三段)を呼んで実験。そうすると「3図は△3四銀が厚く先手が自信ない」とのことだったのでこれをやってみようと決断。

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 いつもは先手が欲しい振り駒ですが、今回だけは後手が欲しかったです(笑)。

(以下略)

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命が磨り減りそうなほど激しい横歩取りの変化。

家にいながら情報が飛び込んできて、内容を吟味・研究し、そのテスト・評価・レビューまで一気通貫で行える素晴らしい研究体制。

一夜にして、離れた場所にいる渡辺明四段、村山慈明三段、佐藤天彦三段がこの局面について同じ情報を共有することができることになる。

ここに登場している村山慈明三段(当時)と佐藤天彦三段(当時)が、今期そろってB級1組への昇級を決めているところなど、とても感慨深く思える。