羽生善治五冠(当時)と加藤一二三九段の打ち上げ後の会話

将棋世界1995年1月号、加藤一二三九段解説の第7期竜王戦第4局〔羽生善治名人-佐藤康光竜王〕「火花散る読みの激突」より。

―普段はお二人の将棋をどういうふうにご覧になっていますか。

「佐藤竜王は、去年のNHK杯戦で当たりましたが、まだ対局数も少なくよく分かりません。羽生名人は、多彩な戦法というのはよく伝えられていますが、大業を狙ってくる将棋で、互角と見ればどんどん踏み込んできます。大きな駒を2回、3回と取り合う将棋です」

(中略)

「本譜は△4四歩のため一遍に危なくなりました。▲4五歩のところで▲4六金(C図)と詰めろに打っておけば先手玉に即詰みはなく羽生名人の勝ちでしたね。

羽生佐藤1994竜王戦第3局C図

 ▲4六金の時に先手玉を詰ましに行くしかありませんが、△7九角▲同玉△8九金▲6九玉△7八銀▲5九玉△5八金▲同玉△6七角成▲4七玉となり詰みません。▲4五歩以降は、佐藤竜王の順当な寄せでした」

(以下略)

—–

将棋世界同じ号の、天野竜太郎さんの「編集後記」より。

羽生「感想戦で話した▲4六金で先手勝ちはおかしいと思うんですが」

加藤「ほほー、どんな手順かな」

羽生「……となってこの手で後手玉の詰めろが消えると思うんですが」

加藤「しかしですよ、こうくる、ああなる、大先生これは詰みでしょ」

羽生「……。そうか、なるほど、そうですね」

 竜王戦第4局、打ち上げ後の一コマでした。

—–

この対局で加藤一二三九段は立会人。

解説で示されているC図の▲4六金は、感想戦の時に加藤一二三九段が指摘した手だったのだろう。

—–

「しかしですよ、こうくる、ああなる」は、いかにも加藤一二三九段が用いそうな話し方なので、加藤一二三九段の物真似をするような時にはぜひ取り入れたいフレーズだ。

「大先生これは詰みでしょ」は斬新。