村山聖八段(当時)が東京へ出てきた年の何気ない日の光景

将棋世界1995年11月号、大崎善生編集長(当時)の「編集部日記」より。

9月18日(月)

 森下八段、村山八段、森信六段、日浦六段らとコーヒータイム。棋士が集まると、まるで川が必ず海に流れるように、話題は羽生善治になる。不思議なくらいに必ずそうなる。

9月22日(金)

 竜王戦挑決で先崎六段が負けた。観戦をお願いした中野さんと3人で新宿へ繰り出す。何軒ハシゴしたろうか、店にいくたびに知り合いに出くわし、一人二人と先崎六段を囲むメンバーが増えていく。映画や麻雀の話で皆でケラケラ笑っていた。「佐藤さんは強い」と先ちゃんが時々思い出したように呟くから、「そうだね」と一言答え、またホラー映画の話が始まるのだった。

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村山聖八段(当時)が東京へ出てきた年の、何気ない日の光景。(9月22日は何気なくない大変な日だが)

大崎善生さん、森信雄六段(当時)、村山聖八段(当時)が東京で3人揃っているシーンは珍しいかもしれない。

「まるで川が必ず海に流れるように、話題は羽生善治になる。不思議なくらいに必ずそうなる」の表現が絶妙だ。

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そして、この年から村山八段と接点が深くなる先崎学六段(当時)が竜王戦挑戦者決定戦第3局で佐藤康光七段(当時)に敗れた日の夜の光景。

いつもなら「佐藤君」なのに、この時は「佐藤さん」と呼んでいるのが胸を打つ。

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今日の22時からのNHK「クローズアップ現代+」で村山聖九段が取り上げられる。

出演は、作家の黒川博行さん、 羽生善治三冠(VTR出演) 、映画『聖の青春』で村山八段を演じる松山ケンイチさん(VTR出演)、同じく羽生六冠を演じる東出昌大さん(VTR出演)。キャスターはNHK京都のアナウンサーの井上あさひさん。

黒川博行さんは森信雄七段ご夫妻の仲人。黒川博行さんにとっても森夫妻が生まれて初めての仲人だった。

唯一のスタジオ出演者に黒川博行さんを持ってくるところが、NHKならではの燻し銀のような絶妙手。

村山聖七段(当時)「僕は森先生が結婚することを、新聞を見て初めて知ったんです。弟子に言わない師匠がありますかねェ」

NHK「クローズアップ現代+「伝説 いま再び ~夭折の天才棋士・村山聖~」