将棋世界1986年8月号、銀遊子さんの「関東奨励会だより」より。
膨張過多の気味がある二段陣から、先月、ようやくエンジンがかかってきた”大器”庄司俊之が抜け出し、今月はさらに二人がその後を追った。今度の二人も庄司におとらぬ、いやそれ以上かも知れぬ器の大きそうな気配をただよわせている。
その名も同じ「俊之」の森内君は昭和45年10月10日生まれの15歳。母方の祖父が名棋士京須行男八段という血筋の良さで、キビキビした指し口が冴える。
対局中はもちろん無言。感想戦でもまわりがほとんど先輩ばかりだからか必要最小限の言葉しか発しないタイプ。で、あいつは何も読んでいないんじゃないか、というカゲ口も立ったわけだが、読まない将棋がこんなに勝ちまくれるはずがないことは説明がいらないだろう。「次の四段は森内で決まり」と、松浦幹事の断言があったことも申しそえておく。
(中略)
森内の強さは、この一局を見る限りはつかめない。ただ言えることは悪い将棋でもくっついていけるしぶとさがあるということと持って生まれた運の強さ。この次の将棋、対村松三段戦では相手が序盤早々に二手指しを犯してしまい労せずして勝ちを拾ってしまった。なにか、不思議な能力を持った少年である。
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森内俊之竜王が15歳の頃の話。
例えば、30歳の人にとっての33歳の人と、15歳の人にとっての18歳の人では、全くわけが違う。
15歳の少年が年上の人に囲まれては、無口になるのも無理はないことだと言える。
ちなみに、この当時の三段陣は、この頃の昇段組を除くと、関東は21歳から26歳までに8人、関西は20歳から27歳まで5人という構成。
森内三段(当時)は、ますます感想戦で無口になっていったかもしれない。