少年時代の藤森哲也四段

近代将棋1999年7月号、和田美代子さんの「女流棋士インタビュー」より。ゲストは藤森奈津子女流二段(当時)。

―アマ四段の息子さん、小学生将棋名人戦はどうでしたか。

地区別の予選で負けてしまって、本人は大ショックのようでした。ウチは主人が付き添ったんですが、主人まで胃が痛くなったみたいですよ(笑)。

(中略)

―日頃の息抜きはどんなことを?何かスポーツとかは?

 おかげさまで丈夫ですが、子どものときから運動オンチで。ゲーム系が好きなんです。子どもに、「また、ゲームやってるぅ」とよく言われます。子どもには「1時間やったら、休みなさい」とか言っているのに、自分がつい夢中になっちゃって。いま、『ファイナルファンタジー』にハマっています。子どもにはゲームソフトも誕生日とか何かのごほうびにしか買ってあげないのに、母親の私がすぐ買って来るので、「ママ、なんで買ったの?」って言われます。

―で、何と言い訳を。

 「欲しかったから」って(笑)。最近は子どもの方も賢くなって、欲しいソフトがあると、「こういうのが出たよ」って勧めるんです。

―勝負事に関しては、勝つまで止められないタイプですか?

 そうですね。負けると、燃えます。

―競馬も好きと聞いたことがありますが。

 子どもの頃から父親が競馬好きで、新聞とか見せられてました。そんなわけで、私はデータとか調べたりはしなかったのですが、昔の馬の名前とかは知っています。競馬は、いま主人が完全にハマってます。ウチのパソコンは、将棋用よ競馬用なんです。(小声で)息子も競馬は好きなんです。

―競馬新聞も読めるとか?

 ええ、将棋と競馬と野球が好きな子です。主人との親子の会話、ときどきこわいですよぉ。たとえば電車の中ででも、将棋の話してたかと思うと、「この間、2500万円のタネつけした……」なんて会話してます。ゲームの『ダービースタリオン』のなかでの話なんですけどね。

―ご主人はよく当てる方ですか?

 知りません。生活費以外の財布は別なので、パチンコで儲かっても、お互いナイショです。

―明るい家庭なんですね。

 いや、心配ですね(笑)。

―お子さんも頭ごなしに「勉強」といわれるより、いいんじゃないですか?

 この間、「勉強教えて」と言われて、「なんで、こんな簡単なのがわからないんだ」って、主人、ヒス起こしてましたけど。

―下のお嬢さんも、競馬に興味を?

 いえ、ごくフツーの女のですよ。将棋もそれほど好きではありませんし。帰りが遅くなる日にはカレーを作っておくんですが、娘が食卓の用意をしてくれるので助かります。

―最近、カレーの日が増えたのですか?

 ええ。去年の竜王戦から、JR新橋駅前にできたファロシティビルで「大内九段のタイトル戦大盤速報会」(18時開始)が始まりまして、その聞き手を担当しています。「次の一手」で賞品も出していますので、ぜひのぞいてみてください。

(以下略)

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藤森奈津子女流二段(当時)がNHK杯戦の司会を務めていて、藤森哲也四段が12歳だった頃のインタビュー。

この年の9月に、藤森少年は奨励会に入会する。

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欲しいゲームソフトがあるときに正面突破を図りたいところをじっと我慢して、「こういうのが出たよ」とゲーム好きなお母さんに情報提供をする発想の転換が、あまりにも素晴らしい。

将棋でいえば、2手続けて指したいような忙しい局面で、ぼんやりと端歩を突いて相手から動いてもらう羽生マジックのような、そのような見事さがあると思う。

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今期の藤森哲也四段は、竜王戦6組で優勝、竜王戦決勝トーナメント2回戦進出など、勝率も含めて調子を上げてきている。

また、藤森哲也四段初の著作「藤森流急戦矢倉」が昨日から発売されている。

藤森流急戦矢倉は、米長流急戦矢倉の改良版。師匠の塚田泰明九段譲りの攻めっ気120%の戦法であるという。

出版元のマイナビ将棋編集部BLOGでも力が入っているようだ。

米長流急戦矢倉ワンポイント講座

米長流急戦矢倉に救世主現るの巻

藤森流で米長流急戦矢倉がよみがえる!

藤森流急戦矢倉に将棋書籍の新しい形を見た!

 

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発売日:2014-08-18