丸山忠久名人(当時)の鍛えの入った体、豊川孝弘五段(当時)の鍛えの入った体

近代将棋2000年9月号、弦巻勝さんの「第58期名人戦七番勝負を見て 心技体」より。

 丸山さんが名人になった。

 正直に言えば僕は心の中で佐藤さんを応援していました。

 丸山さんとはあまり話したことがないからで、佐藤さんは僕がヨッパラッたとき、我が家まで送りとどけてくれたことがある。ただ、それだけ……人間ちょっと関わりがある方を応援してしまいます。

 とは言え、仕事でもあるし、写真は自分の心も写すので、名人戦の間は一歩引いて観て、そして撮っていました。

 今回の名人戦で気付いたことですが、丸山さんは対局中、とにかく水をたくさん飲んだ。

 昔、森雞二九段が対局中にかなり飲んだが、あれよりすごい……。

 今、森さんは僕と友人で何時も一緒の時が多いのですが、水を飲むのを、あまり見かけなくなりました。そのかわり、ビールは死ぬのではないかと思うほど彼は飲みます。

 僕と森さんは人に飲みすぎはよくないよ……と時々言われるので、お互い飲みすぎはやめようね……と注意しあっています。

 だからと言ってはなんだが、丸山さんのあれは飲みすぎだろう……。

 さて今回の名人戦は、1、3、5、6、7局と撮影しました。

  第34期の名人戦から撮り、今期は58期ですから、僕もかなりの数、名人戦を観てきています。

 しかし今回驚いたことがありました。それを書きます。

 それは銀波荘の第5局で、将棋も終わり、打ち上げの酒席も終わり、温泉です。

 団鬼六先生と見学というのか遊びに来ていた豊川五段を誘い湯に行きました。豊川さんは、体そして骨まで鍛えているので、棋士の中では最高に頑丈な男の一人です。

 しかも体育会系でハキハキ、ビシビシだから湯の中の声も通りありがたい。それに話し方は昔の将棋指しを感じます。しかし彼の裸はプロレスを感じます。

 さあそこでだ……僕らが上がる頃、丸山さんが入ってきた。

 対局者と湯で会うことは別にめずらしくもないのですが、浴衣をバッサリ脱いだ丸山さんの体を観て僕は息を飲んだ。

 オオ……これは豊川よりすごい。

 なんなんだ……この体は……一年や二年で作られた体ではない。

 キンコツリュウリュウ、バランスグー。

 タイトル戦は体力勝負、集中力勝負の世界です。

 しかし僕は今までの棋士であれほど鍛えの入った体を観たことがなかった。

 心技体と言うが棋士に初めてお手本を見せてもらうとは思わなかった。

 とにかくすごい。最強だねっ。

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丸山忠久九段も豊川孝弘七段も、スポーツジムでの研鑽の積み重ねが鍛えの入った体の源泉となっている。

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そういえば、バトルロイヤル風間さんもスポーツジムに通っていた時代があった。

アニマル浜口トレーニングジムだ。

腕立て伏せをしながら似顔絵を描くというバトルさんの芸も、この頃に編み出されたものと思われる。

バトルさんの仲人はアニマル浜口夫妻。

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丸山忠久九段が、先週金曜日に将棋会館道場で行われた王将戦第5局大盤解説会で解説を担当した。

丸山九段による大盤解説はこれまであまりなかったということで、とても貴重な解説会。

この時の模様を、以前の記事、「山崎隆之七段(当時)のメガネ」で紹介した宮戸川さんという方が、非常に面白い視点で書かれている。

丸山九段の解説会に行った