木村一基五段(当時)「世界一投げっぷりが悪く、相手は誰だろうと盤上では信用しない」

将棋世界2000年9月号、鈴木大介六段(当時)の「鈴木大介の振り飛車日記」より。

 木村(一)五段との新人王戦。奨励会以来の対戦で公式戦では初対局。

 木村五段のイメージはその粘り強い受けで本人曰く、

「世界一投げっぷりが悪く、相手は誰だろうと盤上では信用しない」

 らしい(そうか、あの高勝率はここから来ているのか…)。またお酒大好きお喋り大好きで、よく対局控え室で、さすがにアルコールは飲まないが油を売っていることが多い(人の事は言えないが…)。また対振り飛車には最近では珍しく急戦しか出来ない(失礼しました)ようでその急戦も一気に潰すのではなく粘って粘りまくる急戦?なのだからタチが悪いと振り飛車党からは評判だ。

 今回もあの嫌な急戦かと思いきや四間VS居飛穴に進行。さすが急戦党の穴熊で4図ではラクラク振り飛車捌ける形になっている。

 不思議なことに奨励会の頃から木村五段の玉は堅ければ堅いほど寄せやすく、逆に薄ければ薄いほど寄せづらい玉で、特に玉を裸にしてしまったら目が爛々と輝くのだから玉を堅める党の僕には理解出来ない所があった。

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 逆に玉が堅いと精彩を欠くようで4図以下△4五歩▲5三飛成(思わず指す時「スマッシュ」と言いたくなってしまった)△同飛▲4五桂(5図)と気持ち良く攻めて以下木村五段をサンドバック状態に…。

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 久し振りの快勝。控え室で夜戦のために取っておいたであろうアンパンをムシャムシャ食べる木村五段を見てさらに御満悦になった一日でした。

(以下略)

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「不思議なことに奨励会の頃から木村五段の玉は堅ければ堅いほど寄せやすく、逆に薄ければ薄いほど寄せづらい玉で、特に玉を裸にしてしまったら目が爛々と輝くのだから玉を堅める党の僕には理解出来ない所があった」が絶妙だ。

「また対振り飛車には最近では珍しく急戦しか出来ないようでその急戦も一気に潰すのではなく粘って粘りまくる急戦?なのだからタチが悪いと振り飛車党からは評判だ」も最高。

4図からの△4五歩に対する▲5三飛成は、本当に気持ちよかったと思う。

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鈴木大介六段(当時)の「鈴木大介の振り飛車日記」はこのブログでも何度も取り上げているが、非常に面白い連載だった。

その中でも特に面白い、あるいは歴史的に貴重な作品を挙げると次の三作。(他も十分に面白いので、ブログの右中ほどにあるサイト内検索で”振り飛車日記”で検索してみてください)

深浦康市九段の少年時代の有名な名言→ストイックだった深浦康市少年

昔の行方尚史八段らしさに溢れた行方尚史六段(当時)→大盤解説の本音

”おしゃべり三羽烏”の一人、近藤正和六段の奨励会時代の超大胆な発言(三羽烏の残りの二人は鈴木大介九段と木村一基八段)→コンチャンご機嫌事件

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先崎学八段(当時)が鈴木大介五段(当時)を語るエッセイがあって、これが泣かせる。→鈴木大介八段の涙

「振り飛車日記」の鈴木大介九段の奥様関連

棋士の妻

鈴木大介六段(当時)「穴熊の天敵は一に全駒、二に姿焼きであり、このように駒がぶつかれば後は負けても僕の責任ではない、というのが穴熊の極意?なのである」