鈴木大介六段(当時)「今となっては深浦超合金は私の味方です」

将棋世界2003年2月号、神崎健二七段(当時)の「本日も熱戦関西将棋」より。

1月17日 20時以降

 棋士室には、多くの棋士が来ていたものの、関心は差の開いたモニターテレビではなくて、10秒将棋の勝ち抜き戦。

 最初は三段二人で指していたところにやはり明日B2対局の鈴木大介六段が参入。最初座っていた二人が対戦することはもう二度とはこなかった。

 内容も一方的に勝ち続け、相手変われども主変わらず。しかも指しながらつぶやく話術は面白すぎ。それをすべて書いていては、振り飛車日記の復活になってしまいそうなので省略。

「これで明日の順位戦で負けてしまうというストーリーだと私はあまりにも悲しすぎますよね」

 連勝が10近くになったころに、もう見ちゃおれんと平藤五段が挑戦。10人以上はいた全員が注目。

 ところが、完封シャットアウトできそうだった平藤、漫画に書いたような坂道の転げかたで逆転負け。

 その後連勝は13まで伸びて、14局目に三度目の挑戦で平藤がようやく、鈴木を休ませてあげることに成功して終了。

「明日は▲7六歩△3四歩に対しての3手目が問題だ。▲7五歩かな。たぶん△4四歩だと思うんだけど」とひとりごとの鈴木。

1月18日

19時10分

「奇手を放ってきました」

夕食休憩後、皆が多くの棋譜を並べているのを眺めながら鈴木がひとりごと。その後、二言三言何か悲観的なこともぼやいてはいたが、誰もその後半は信じてはいない。でも中には、昨日の10秒将棋で、ゆるい球を打ちすぎた弊害か?との心配の声も。

 そこまで言われては見に行かなくてはいけない。内藤の長考中の盤面は4図。

 棋譜を見ると4手目△4四歩まで昨日の予想どおり。

 確かに妙なところに見たことのない桂打ち。もしかすると、きしゅは奇手ではなく鬼手のほうのキシュだったのか?

 なかなかこの▲5四桂は浮かびにくく、淡路、杉本、平藤はじめ何人かで数手先から予想してもらったがなかなか浮かびにくい手。

 鈴木としては、大長考の夕休をはさんだ69分の一手は、決め手となった。桂を△同歩と取れば▲6三金の打ちこみ、角を逃げれば▲6二桂成から▲6三金でつぶれてしまうのだ。

21時

 感想戦。

「何かあがいて来たなあと思ったら、こっちがやられてた。考えてたらあんまり悪いんで最後には笑うてしもたわぁ」と淡路九段に自嘲ぎみに話しかける内藤。隣で深浦と対局中の有吉九段。中盤の手順を質問。内藤乗りの手順を指摘して、その後両対局者も、その説に賛同。

「この手筋は、覚えても、使うことはないなぁ。この将棋一局だけや」と内藤でもいうほどの珍しい場所の歩頭の桂。

24時

「今となっては深浦超合金は私の味方です」(理由は順位戦の表参照)

 B2では、全勝の深浦も1敗の中川も勝って自力を維持。依然三番手のままの鈴木は、感想戦終了後もいつまでも棋士室にいて、この部屋が自分の住みかであるかのように、いろんな将棋を次々と並べていた。

 その中には、派手な応酬の中原-久保戦(中原勝ち)、島-郷田戦(島勝ちで昇級)の途中までの棋譜もあった。

 鈴木は脱落しようとも、逆転昇級しようとも、来期も相変わらず楽しそうに10秒将棋を指しつづけているような気がする。そういえば、最近関西では若手棋士が10秒将棋を指す姿は、少なくなってきたかも?

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4図の鈴木大介六段(当時)の▲5四桂がワクワクするような凄い手。

内藤國雄九段の「この手筋は、覚えても、使うことはないなぁ。この将棋一局だけや」もユニークだし、対局中なのに感想戦に参加してくる有吉道夫九段も面白い。

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「今となっては深浦超合金は私の味方です」。

その心は。

この時点での順位戦B級2組の戦績上位は次の通り(段位は当時)。

深浦康市七段(5位)8勝0敗

中川大輔七段(6位)7勝1敗

鈴木大介六段(4位)6勝2敗

最終戦で深浦-中川戦。

つまり、自身では残りを2勝するとして、最終戦で深浦七段が勝ってくれれば、鈴木大介六段が昇級できるという勘定。

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実際には、

鈴木大介六段(4位)は残り2連勝で8勝2敗。

中川大輔七段(6位)は9戦目の対行方尚史六段戦に敗れ、最終局の対深浦戦に勝ち8勝2敗。

深浦康市七段(5位)は9勝1敗で昇級。

で、中川大輔七段が頭ハネとなり、深浦康市七段と鈴木大介六段の昇級が決まった。

順位差1つは1勝分という言葉があるが、まさにそのような事例。

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それにしても、深浦超合金という表現が秀逸だ。

勝負師としての深浦康市九段を表わす見事な形容詞となっている。

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鈴木大介九段と深浦康市九段というと思い出してしまうのがこのエピソード。

ストイックだった深浦康市少年

 

 

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