森安秀光九段「ぼくちゃんの将棋はね。引き角にされて△2二飛と受けたことはないんです。今日の将棋もそうだったでしょ」

今年の5月29日に亡くなられた元・近代将棋編集長で将棋ペンクラブ幹事の中野隆義さんから、このブログのコメント欄に寄せられた数々の棋士のエピソードより。

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朝から闘志が充満している対局室」への中野さんからのコメント。

大五郎流の盤前クラウチングスタート姿勢は何度か見たことがあります。初めて見たときは、ウオッ! ナニッ!? (@0@;)とびっくらこけました。
ある日、と金部屋で、大五郎流を真似する奨励会員が居て、皆でゲラゲラ笑っていたら、なんとご本人が入ってきて、シーンと固まる皆を見渡し「君。そんな格好で将棋指してちゃ駄目だよ」と言ったときは、笑いをこらえるのが大変でした。

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佐藤大五郎九段本人が入ってきたのだから、控え室は一瞬で凍りついたはずだ。

それなのに、「君。そんな格好で将棋指してちゃ駄目だよ」と全く予期しないことを言われてしまっては、相当な精神力を持っていなければ、笑いをこらえることはできなかっただろう。

私にはとても無理そうだ。

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広い東京でただひとり、泣いているよな夜がくる」への中野さんからのコメント。

森安流とは、なんと、デュエットしたことがあります。
あれは、もう二十年以上前になりますか、将棋会館で行われた二上ー森安戦の感想戦の後だったと思います。帰ろかなと、4階のエレベータホールにてカゴ待ちをしていましたら、二上流が、「新宿に出ようと思っているんだけど、どうかね」と、近くにいた森安流に声をかけ、その声に思わず、待ってましたあという顔で振り向いた私めにも、優しく「君もどうかね」と言ってくださったのでした。
風林会館近くにある「ポトス」に入りますと、二上流は森安流に奥の上席を勧め、私めには「君が真ん中に座って」と言って、ご自分は出入り口に近い席に腰をおろしました。
さっそく歌の時間とありなりまして、どんどん歌ったのですが、森安流が提案した「さささ、順番で歌いましょうね。まずは前座で私が歌いますから、次はあなたが歌って、真打ちへとね。そこからは今の順番を戻ってあなた、私、とね。行ったり来たりでいいでしょう」という通りにしていましたら、これって私が二回に一回のハイペースで歌うことになってしまうのに気がつきました。
行ったり来たりを4、5回繰り返したあたりで私めが「マドンナたちのララバイ」をリクエストしまして、そのイントロが流れ出したときのことです。
「あっ、この歌、ぼくちゃん大好きなんです。一緒に歌っていいですか」
「いいですかもなにも。どうぞ、先生が歌ってください」
「いや、あなたも歌ってください」
「そ、それでは」
ということで森安流とデュエットしてしまったのでありました。
あのとき、酔っぱらった森安流が「ぼくちゃんの将棋はね。引き角にされて△2二飛と受けたことはないんです。今日の将棋もそうだったでしょ」と胸を張って言い放ったのを今でもよく覚えています。

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二上達也九段、森安秀光九段、中野さんの様子が目に浮かぶようだ。

「引き角にされて△2二飛と受けない」は、引き角からの▲2四歩△同歩▲同角を事前に△2二飛と受けるのではなく、▲2四歩△同歩▲同角とされてから△2二飛と回る、という意味。

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深浦康市七段(当時)にとっての、将棋の世界に入らなければ会えなかったタイプの人」への中野さんからのコメント。

森下流が割り箸を紙切れ一枚で割ろうとしたのも、電話帳をふんぬとばかり腕力で裂こうとしたのも、両方とも私めも食っています。
割り箸のときは、おそらく振り下ろす瞬間に指を素早く一本立てて、それで割るんだろうと思ったところ、本当にマジで紙で割ろうとしているのを知って驚愕しました。
確か一度、電話帳ではなく少年ジャンプだったかと思いますが、見事にまっぷたつにしちゃったのを見せてもらいました。
それまでは森下流はちょっと線が細いかなという感じを持っていましたが、なかなかどうして大したやっちゃと思い直したものです。

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増田康宏四段もやられたかどうかは興味深いところ。

 

 

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