将棋マガジン1985年3月号、「公式棋戦の動き」より。
この加藤。最近、古い自分の対局写真を見せられたとき、すぐに昭和✕✕年です、と答えた。すごい記憶力だと思っていたら、写真に写った局面を見ているのである。「あの将棋はこうやって、こうやって、ああやった将棋だから、うーんと△△戦の第○局目ですね」。
なるほどと感心した。
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写真だけを見て昭和✕✕年とわかる方が凄いのか、写真に写っている局面を見て昭和✕✕年とわかる方が凄いのか、といえば、やはり局面を見て「あの将棋はこうやって、こうやって、ああやった将棋だから、うーんと昭和✕✕年の△△戦の第○局目ですね」の方が凄いと思う。
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加藤一二三九段は複数の将棋雑誌で自らの名局を解説する連載を持っていたが、それは1990年代以降のこと。
そのような連載を持っていれば過去の棋譜を調べることが多くなるので、局面を見ただけでいつの対局かすぐに思い出せるようになるかもしれないが、この話はそれよりも前の出来事。
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棋士は「過去の自分の対局の棋譜を覚えている」派と「過去の自分の対局の棋譜は覚えていない」派に分かれる。
「過去の自分の対局の棋譜を覚えている」派でも、加藤一二三九段は✕✕年の△△戦の第○局目までリンクしているのだから、完全無欠な「過去の自分の対局の棋譜を覚えている」派と言えるだろう。
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「過去の自分の対局の棋譜を覚えている」派と「過去の自分の対局の棋譜は覚えていない」派の棋風の違いなどが分析できれば面白いのだろうが、とても難しそうだ。