加藤一二三王位(当時)の、話半分でも凄い話

将棋マガジン1985年2月号、第11回名将戦決勝三番勝負〔加藤一二三王位-内藤國雄九段〕第2局観戦記「加藤、絶妙手で決戦へ」より。

 加藤の奇行は定評のあるところだが、先日、またおもしろい話を耳にはさんだので紹介しよう。

 東京将棋会館の1階に、将棋関係の本を売っているところがある。そこに加藤が上機嫌であらわれ、本を2冊ほど買ったという。

「ありがとうございました」と言う間もなく、加藤は鼻歌まじりで、またフラフラと本棚の方へ近寄り「これも、もらおうかな」とまた2~3冊の本をカウンターに置いた。それを包み終える間もなく「あ、これも」と10冊。「これも、いいなぁ」でまた10冊。とうとう置き場がなくなり、台車を持ち出して、ドッサ、ドッサと本を積み始めたという。加藤の気が済んだ頃には、職員も加藤も汗だく。一日で買った本の数なんと210冊。加藤の帰ったあとの本棚は、まるでイナゴの大群にでもおそわれた跡のようだったという。

(以下略)

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このような伝聞の場合、途中で話が盛られて、実際の冊数よりもかなり多くなりがちであるが、仮に倍に盛られていたとしても105冊だから凄い。

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105冊も210冊も300冊も400冊も、想像を絶する冊数なので驚きの度合いはあまり変わらない。さすがに500冊を超えると驚きも次の段階に入るが、何冊以上だと凄いと感じるのか考えてみた。

10冊は持って帰ることができるので、これはニュースにならない。

20冊も、まあ好きな人ならあるだろう。

30冊も、かなり好きな人ならあるだろう。

40冊あたりから微妙になってくる。

50冊なら驚きたい。

45冊ならどうか。

微妙だ。

50冊以上が驚きの分岐点のような感じがする。

四捨五入の感覚が無意識に出てくるものなのかもしれない。