将棋マガジン1987年9月号、コラム「棋士達の話」より。
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棋士間にライバルの話は多いが、名人戦で激突した中原-米長も有名で、感想戦などでもゆずらない。ある講演で米長九段「中原さんの感想はどうも信用できぬ。だから私は彼の事を、ウソから出た誠、といっている」と語り、大ウケした。
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関西では有吉九段-内藤九段の関係もかなり人に知られている。ある時道でバッタリ出会った。内藤九段は仕方なく「やあ」と声をかけたが、有吉九段は聞こえぬふりをしてそのまま行ってしまった。ここまで行くと少々子供じみている?
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内藤九段を破ったある若手棋士がうれしさか、「歌手には負けません」と自慢話。それを聞いて有吉九段は「君にそんな事をいう資格はない」と烈火のごとく怒った。そう、相手の強さを認め、それに勝ってこそ真のライバルなのである。
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田中(寅)八段は谷川九段に闘志を燃やすが、勢い余って舌禍事件も起こした。”あれは言い過ぎ”との評判に根は気のいい田中八段は反省したか、ある時谷川九段にあやまった。すると今度は”あやまってはいかん” 棋界雀は勝手なもの。
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棋士に野球ファンは多いが、中原名人の巨人、谷川九段の阪神などが有名。石田八段は中日ファンだが心配性のため応援しながらも「中日は勝てませんかね」と落ち込む。球場で一緒の人に「気が滅入るから先生は応援しないで」といわれた。
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有吉道夫九段と内藤國雄九段は、2001年にふとしたことがきっかけで二人は非常に打ち解けた関係となっている
→雪解け
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石田和雄九段の対局中や解説の時のボヤキは絶妙かつ芸術の域に達しているが、野球観戦の場合にもボヤキが発動されていたことがわかる。
1987年の中日ドラゴンズは、星野仙一監督の1年目で、落合博満選手がロッテから移籍した1年目。
5月末は1位だったものの、6月末と7月末は3位。
「気が滅入るから先生は応援しないで」と言われたのはこの頃である可能性が高い。
6位や5位に向かう戦績ならボヤキは逆に少なくなるだろうが、3位や2位の時の負け試合ではボヤキが多くなりそうだ。
このシーズンの中日の最終成績は2位(1位の巨人と8ゲーム差)。
更に石田和雄八段(当時)のボヤキは増えたことだろう。