中井広恵女流二段(当時)「微妙なすれちがいで、いつも私の上には直子ちゃんがいる。いつか追いつきたい、追い越したい」

将棋マガジン1985年5月号、中井広恵女流二段(当時)の第7期女流王将戦「挑戦者になって」より。

 蛸島さんとの対局がおわる。まだ実感がわかない。電話で両親の声を聞いて、何となく”ああ挑戦者になったんだなあ”という気持ちになった。二度目の挑戦。以前のような”相手が誰だろうと絶対に負けない”という自信が今ではなくなっているような気がする。一度目の挑戦の時は、先勝したのにタイトルを取ることができず、とても悔しかった。それも、日がたつごとに”あそこでああ指していれば…”ということばかり考えていた。今でもそう思う。今度の女流王将戦では、そういう後悔の気持ちをぶつけてがんばりたいと思う。

 直子ちゃんとは、小学校五年生の時に初めて会った。その時はもうプロだった。

 六年生になって、私も2級で女流プロになる。直子ちゃんは女流王将。中学に入り、挑戦者になる。直子ちゃんは二冠王。微妙なすれちがいで、いつも私の上には直子ちゃんがいる。いつか追いつきたい、追い越したい。そう思いながらもろくに勉強せずに十五歳になってしまった。若い若いといわれても、もう中学卒業。これをひとくぎりにするためにも――。

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蛸島彰子女流六段、山下カズ子女流五段の時代が女流棋界の創世記とすると、次の世代の林葉直子さん、中井広恵女流六段、清水市代女流六段が女流棋界を更に大きく発展させた。

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この女流棋界の新しい時代の幕開けが、林葉直子女流二冠(当時)の誕生であり、林葉さんに追いつき追い越そうとしていた中井広恵女流二段(当時)の登場だった。

この二人は非常に良いライバル関係であったし、仲も良かった。その友情は現在に至るまで続いている。

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今日の中井広恵女流二段の文章を読んでいると、感慨深さとともに、そのような新しい時代の始まりということを強く感じさせられる。

やはり、ここにも切磋琢磨しあう関係が存在し、その力が新しい時代を切り開いていくことになる。

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明日(5月19日)行われる将棋ペンクラブ交流会では、指導対局で中井広恵女流六段に来ていただきます。

皆さまのご来場をお待ちしております。将棋ペンクラブ会員でない方の参加も大歓迎です。

将棋ペンクラブ関東交流会